強がりさんは恋に臆病 (ページ16)

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『どこ行くの！？』

「歩いてゆっくり話そ」

『いい、聞いてくれなくて。このまま帰る』

誰かに話して解決することじゃないし

言ったら余計辛くなるだけだし

手を振り解こうと足が止まるけど

「その顔見て、"はいそうですか"なんて言えるか
　強がろうとするな」

そう言ってまた歩き出す

純喜の勢いに逆らえないまま

私は付いていくしかなかった

電車を降りても繋がったままの手

『純喜、手、、』

「あ、ごめん」

離れた手は焦りからか少し汗ばんでいた

改札を抜けて人通りの少ない道を2人で歩く

「さっきの話なんやけど、、」

『素面で言うのキツいな〜(笑)』

なんてわざと笑ってみせたけど

「真剣な話」

参ったな、、

『うーんとね、、』

どう話そうか

『、、、去年別れた。つまんなかったんだって、私。』

雫が落ちるように言葉が出る

『つまんないから、、浮気された、家に相手を連れ込んで、、それも記念日にね』

あーもう、、苦しくなってきた

『そのこと考えたくなくてバイトに明けくれてるって訳。笑えるでしょ』

「何が」

『え？だから、浮気されて、、』

「笑わなあかんのか？それを」

『だってそうじゃないとさ、、苦しいじゃん、、？』

どんどん震え出す声、歪み出す視界

『だからその時に、もう誰かを好きになるなんて嫌だって、、』

あんな辛い思い、もう2度としたくない

辛くて辛くて

でも悲しいって泣いたら負けだって思っちゃって

あの時は怒りでしか泣けなかった

「それで一年経っても、まだ、、？」

『そうだよ何か悪いの！？』

純喜が悪い訳じゃないのに、逆恨みみたいにぶつけてしまった感情

『ごめん、、いいことないでしょ？私の話聞いても』

純喜が合わせてくれていた歩くスピードを無視して

2人の歩幅がズレていく

このまま一人で帰りたい

そう思った時だった

後ろから腕を掴まれて

そのまま吸収されるように抱き寄せられた

『、、やめ、』

「我慢するかよ、、普通。泣くことくらい自分に許してやれ」

、、、なんでそんな、、

「悲しいならちゃんと泣けばええやん」

優しくするの、、

『、、っ、！』

「これなら泣き顔見えへんやろ？」

頬を伝う大粒の涙でスーツが濡れていく

押し殺していた声も抑えられなくなって

純喜のスーツを掴んでいた

その時純喜は、何も言わず

静かに抱きしめてくれていた