強がりさんは恋に臆病 (ページ1)

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開店して間もないのに賑わう居酒屋

11月になって外は少し肌寒くなったてきたけど

店内は人が多くて生温い空気が漂う

『いらっしゃいませー！』

私は今日も店内を忙しく走り回り

オーダーを取っては料理を運ぶ

大学4年になって、内定も決まり

4月まで正直暇人

今しかないからって

周りでは遊んでる子も多いけど

そんな気分になれなくて

時間があれば、ここで働いてる

その方がイヤなことを考えなくて済むから

去年の今頃

大好きだった彼氏を振った

半同棲までしてたのに

記念日だって店長に伝えたら

早めに上がらせてもらえたのに

彼の家に行ったら

絶対に私のじゃないヒールが脱ぎ捨てられてて

嫌な予感しかしない

玄関に立ち尽くしていると

部屋から聞こえてくる男女が互いを求め合う吐息

完全に裏切られた、、、

記念日にバイトに入れた私が悪かった？

何か浮気させるようなことした？

彼への気持ちが一気に冷めて

別れ話をした時に

『浮気したよね』

って、聞いたら

「だってお前、つまんないから」

ただ冷たく、そう言われた

『そっか、分かった。別れよ』

私は好きだったよ？

望むことは嫌がらずにやってきたじゃん、、

好きだったはずの彼を許せなくて

でも裏切られたことは悲しくて

もう誰かを好きになんてなりたくない

そう思った

1人になると思い出しちゃうから、常に賑やかなここにいれば

そんなこと考える暇ないから

少しは落ち着ける

「八乙女さん！15番卓、オーダー早く行って！」

しまったボーッとしてた

『はい！』

15番は2階の個室

ペンとクリップボードを持って階段を駆け上った