【HQ】それはきっと、素敵な恋。【男主】

天然たらしと谷地さん その1 ページ24

．


飛雄くんに手を振り、手招きをする姉の言う通りに体育館へと入る。

広い体育館を見渡すと、ジャージ姿の菅原さんと目が合った。菅原さんはニコニコと笑みを浮かべながらこちらへ駆け寄ってくる。


｢よく来たなー！｣


そう言ってわしゃわしゃと僕の頭を撫でる菅原さんは、とても嬉しそうだった。クラスはどうだったか、部活勧誘はちゃんと交わせたか、友達はできたか、なんてまるで世話焼きな母親のようなことを聞いてくる菅原さん。僕がそれに、大丈夫ですよと返せば、よかったべ！なんて笑っていた。


｢待ってな、今大地呼んでくるから｣


そう言って、菅原さんは僕に背を向ける。僕は、澤村さんのことを知っている。それから、東峰さんのことも。菅原さんと3人そろって、たまにうちに遊びに来るのだ。


｢よう春樹、入ってくれてありがとうな。マネージャーが増えてくれて本当に助かるよ｣


｢いえいえ。これからよろしくお願いします｣


僕がぺこりと頭を下げれば、新入部員スかー？なんて声が飛んでくる。声の元へ目線を移すと、坊主頭の人が僕の方へ視線を向けていた。


｢新しいマネージャーだよ。清水の弟の春樹くんだ。優しくしてやれよ｣


｢潔子さんの弟スか!? どうりで顔整ってるわけっスね〜。でもあんまり似てないか……？ あっ、俺は田中龍之介な。田中先輩と呼べ！｣


｢コラ田中！ そんな自己紹介があるか！ 春樹、こんなの気にしなくていいんだぞ〜。むしろ呼び捨てでも……｣


そんな!!と大地さんの方を向く田中先輩に思わず笑ってしまう。


｢よろしくお願いします、田中先輩。でも一つだけ……僕はお姉ちゃんみたいに綺麗じゃないです！｣


｢は？｣


｢お姉ちゃんは凄いんですよ！ 美人で、スタイルも良くて、勉強もできて、すっごく足が速いんです！ しかも料理が上手くて、何より優しいんです！ それから……｣


｢春樹、いい加減にしなさい｣


お姉ちゃんにペし、と頭を叩かれて話すのを止めると、澤村さんは田中と気が合いそうだな、なんて笑っていた。


｢春樹、今からマネージャーの仕事の説明するからついてきて｣


歩き出す姉の背中を、僕は急いで追いかけた。

天然たらしと谷地さん その2→←〜読者の皆様へ〜

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す