“好き” その3 ページ20
.
思わず口にした名前。そう大きくはない声だったが、春樹の耳には十分届いたようだった。
「飛雄くん……」
春樹は、元々ぱっちりとしている目をさらに見開き、俺の名前を呼ぶ。
「なんでここにいるの……?」
「そっちこそなんで……」
俺はてっきり、頭が良くてバレーも上手くなった春樹は、強豪で偏差値も高い白鳥沢か、もしくは同じく強豪で及川さんのいる青城に行くと思っていた。
「僕はお姉ちゃんが烏野だったからだよ。飛雄くんは?」
春樹は、胸の前で自らの片手同士を強く握り合わせる。約2年半、ずっと近くにいたからわかる、春樹の緊張しているサインだった。
(くそ……)
俺はなんとなく苛立ちを抱えながら、白鳥沢に落ちたから、と答えると、春樹はそっか、とだけ言い俯いてしまった。
違う。俺が今一番話したいのは、伝えなくちゃならないのは、こんなことじゃない。
「春樹!」
「飛雄くん!」
2人の声が重なった。言いたいことは、多分一緒。
「先にどうぞ……」
春樹に促された通り、俺は先に口を開く。
「春樹、あの時はすまん。そのあとも避けるような真似して悪かった」
俺がそう言って頭を下げると、春樹は俺の上体を起こし、思い切り抱き締めてきた。
「ごめんね……ごめんね……! 飛雄くんは何も悪くないんだよ……! 僕が……僕がもっとちゃんと……」
必死に言葉を紡ぐ春樹の声は、震えていた。
(泣いてる、のか……?)
静かに春樹の様子を伺っていると、ひっく、と嗚咽が聞こえたことで、疑いが確信に変わる。俺は春樹を、強く抱き締め返した。
細くて、殴りでもしたら折れてしまいそうな体。柔らかく艶のある髪。優しくて、清潔感の溢れる匂い。その全てが、俺の鼓動を加速させる。
(やっぱり俺は、春樹のことが……)
150人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハムちゃん大先生(プロフ) - 優麻さん» 了解しました!この物語中に織り交ぜたいと思います。今後の展開にご期待ください! (2020年1月1日 18時) (レス) id: 2a7a4ab774 (このIDを非表示/違反報告)
優麻 - ハムちゃん大先生さん» ぁ、あ、ありがとうございます!及川さんと岩ちゃんと三角関係が欲しいとか言っても…? (2019年11月19日 22時) (レス) id: fe7d430fbe (このIDを非表示/違反報告)
ハムちゃん大先生(プロフ) - 優麻さん» リクエストも募集しておりますので、こんな話が読みたい!という希望がありましたらなんなりとお申し付けください。リクエストは作中に織り交ぜたり、次回作の参考にさせて頂きますので、お気軽によろしくお願いします! (2019年11月19日 12時) (レス) id: 2a7a4ab774 (このIDを非表示/違反報告)
優麻 - ハムちゃん大先生さん» みぎゃああああああありがとうございます!楽しみにしてます!すごい分かります。どうしても悲恋が書きたくなるんですよね。私は書けないんですけど! (2019年11月11日 20時) (レス) id: fe7d430fbe (このIDを非表示/違反報告)
ハムちゃん大先生(プロフ) - 優麻さん» 木兎さんと国見くんもかっこいいですよね! 出来ればこの2人も、物語の中に登場して夢主くん達と絡むようにしたいと思います! (2019年11月10日 17時) (レス) id: 2a7a4ab774 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハムちゃん大先生 | 作成日時:2019年11月5日 22時