スイミング・フール １

夏風邪には気をつけなきゃね ページ8

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あれから一週間。この前の出来事が嘘みたいに、ミンハオくんとばったり会うことはなくなって、私の心と生活は平穏に戻りつつある。
前みたいにミンハオくんを遠くから見たり、隠し撮りをしたり、そんな日常も。


少し変わったことといえば、ソクミンくんと隣の席になったこと。前よりも話す機会が増えたので、Aちゃんって呼んでくれるようにもなった。


ソクミンくんは本当に優しいから居心地が良いし、ミンハオくんやミンギュくんのお話を聞くこともできて一石二鳥。ハンソルくんは斜め前なので、これもまたラッキーだったと思う。



「ソクミンくん、そんなのど飴好きなの？」



机の横に掛けられた袋の中から見えた大量ののど飴。普通のキャンディーじゃなくて、龍角散とかスースーするような飴。



「あー、違うよ。これはミンハオの」


「えっ？ミンハオくんの…？」


「うん、あいつ体調崩しちゃって今日休みなんだ。だから学校終わったら届けに行こうと思って。のど風邪みたいだから」


「そ、そうなんだ…」



確かに今日はミンハオくんを見かけていない。


３・４時間目は授業に出ていない方が多いことに気づいたので、この後の体育の時間で見れるかなあって思っていたのだけど…。


体調が悪いって、熱とか出てるのかな…？
それにそんな大量ののど飴…。



「あいつ普段は元気なんだけど、一回体調崩すとなかなか治んないんだよね…病院行ったのかなあ」


「えっ、病院行ってないかもしれないの！？」


「うん、あいつん家共働きだし…面倒臭がりだから寝ときゃ治るって思ってそう」


「ええ…」



有り得そう。それは有り得そうだ。ますます心配…。私にできることはお祈りくらいしかないし…あ、そうだ。



「ソクミンくん、これ…」


「うん？ゼリー？」


「もし食欲なかったらこういう方がいいかなって…朝買ったからぬるいけど…冷やしたら美味しいから」


「え、いいの？Aちゃんのおやつなんじゃないの？」


「私は大丈夫！家に帰ったら沢山あるし！」


「わー、ありがとう！優しいなあ、Aちゃんは！」



いえいえ…お友達の為に大量ののど飴を買って届けようとしているソクミンくんの方が何倍も優しいと思います。


ホームルームが終わるとすぐリュックを背負ったソクミンくんは、「本当にありがとう！」と最後のお礼も欠かさずに言ってくれて、走って帰って行った。


ミンハオくん、酷くないといいなあ…。




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