スイミング・フール １

一緒にいられることが当たり前だなんて言えない日はいつやって来るのかな ページ25

.




確かにそうだよね。当たり前のように登下校は二人だったし、お祭りやバーベキュー、お互いのお誕生日会だって一緒だったけれど、ハンソルくんだって彼女が出来れば私とはいられなくなる。それが大人になるっていうことだ。


私より何段も大人の階段を上っているミンハオくんだって、きっと今日は私達とは回らないだろう。それも、彼女さんがいるから。



「ハンソルくんとの夏祭りは、今年で最後かもね」


「ハンソルくん、あんなに格好良いもん」



妹の名前の言った言葉が、やけにリアルに思えてきた。


ハンソルくんはお母さん似で、男の子だけど真っ白で、まつ毛が長くて、ふわっとした髪も少し茶色がかっていて、小さい時から女の子みたいに可愛かった。正直保育園で一番可愛いと言われていた女の子よりも可愛かったと思う。だから、格好良いとかそういう風には見ていなかったのだ。


だけど、モテるのは確かだ。今年に入って何回告白されてきたんだろう。私が覚えている範囲では二桁を越している。
その度に断っている彼が、今まで誰とも付き合ったことがないのも知っているけれど、ハンソルくんだって、いつかビビッとくる女の子が現れれば、その子と付き合うんだろうし。


こんな私でさえ恋しているのだから、ハンソルくんだって近い将来誰かと付き合うだろう。それは明日かもしれないし、明後日かもしれない。




「おばあちゃんー、Aいますか？」


「あ、噂をすればなんとやらだね。お姉ちゃん」


「はーい。Aちゃん、着付け終わったよ。行っておいで」


「うん」



実家とは違う昔ながらの平屋のこの家は、よくハンソルくんとお昼寝をした場所。


縁側を出ると、Ｔシャツに半ズボンというラフな格好をしたハンソルくんの姿。



「A、迎えにきたよ」



いつもと変わらない、太陽に溶け込むようなふにゃっとした笑顔。


格好良いとは思うけれど、私にとっては可愛いが勝ってしまう。



「うん、ありがとう」


「…似合ってるね、浴衣」



陽射しが窓に反射している。眩しそうに、照れくさそうに見つめてくるヘーゼルの瞳はこんな時だって綺麗だ。


だけど、ミンハオくんの時みたいに息が詰まりそうになったり、舌がもつれるなんてことはない。



「巾着は？持つよ」


「あ…ありがとう！」




“ハンソルくんとの夏祭りは、今年で最後かもね”




私はこの先、ハンソルくんに甘えなくても生きていけるように、なるのかな。




.

夏祭りの始まり、始まり→←女の子は準備に忙しい

ラッキー夏休みセット

スングァンくんと浮き輪

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す