仮面のシンデレラ【Tatsuya.F】2 (ページ5)

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一歩先を歩いていた足を止めて振り返った綾瀬さん。

「なりたいって気持ちだけで十分じゃない？」

…似てる。深澤君の笑顔と。

何故今深澤君を思い出したのかは分からないけど。

あっという間に食堂に着いて

自販機の前で何にしようかなーと悩んでいる。

さっさとその場を去ればいいだけなのに、タイミングを失って居心地悪く腕あたりを触っていると

すっと目の前に差し出されたコーヒーの紙パック。

「はい、これ！コーヒー好きだったよね？」

あの時屋上で缶コーヒーを投げたからだろうか。
返事を聞く前に手の中に収められる。

「天気も良いし今日サボっちゃわない？」

『…え？』

「お菓子適当に買ってさ、どこか気持ちいいところでのんびりしようよ！」

「めっちゃ良いじゃん！俺も混ぜてよ」

「何で辰哉いんの？！私がAちゃん誘ってんだけど！」

「いやいや、まず俺が水瀬さんと友達になったから里穂だって話せたわけじゃん」

『私深澤君と友達になった覚えないんだけど』

「ちょ、ひど！俺はもう友達でしょ？！」

突然登場した深澤君と、目の前で繰り広げられる会話についていけない。

2人は気づいてるのか分からないけど、周りからの視線が痛い。

当然だろう。

深澤君1人でも目立つのに、にぎやかな綾瀬さんもいてそこに普段1人でいる私がいるんだから。

「ほい、水瀬さん」

『え、何で私のカバン』

「サボるんだから荷物いるっしょ。ほら里穂のも」

「えー気が利くじゃん辰哉！しょうがない、辰哉も混ぜてあげよう。行こうAちゃん！」

『わっ』

さっきから引っ張られてばっかり。

グイグイと手を引っ張る綾瀬さんと、それを楽しそうに笑って見てる深澤君。

連れてこられたゲームセンター。

昼間に制服でこんなとこ来て大丈夫なのかとキョロキョロしていたら、どうやら深澤君がここの常連らしく店員さん黙認らしい。

真剣にガラスの中を見て操作する深澤君と、横で倍以上の熱量で応援している綾瀬さん。

そういえば前に大ちゃんが連れてきてくれたことあったっけ。

私な好きなキャラクターの人形を取ってくれた。

取るまで帰らない！ってあの時は年上なのに子供みたいだったな。

『！』

急に目の前に人形のドアップ。

「これあげる」

大ちゃんから貰ったのと同じ、昔好きだったキャラクターの人形だった。