仮面のシンデレラ【Tatsuya.F】2 (ページ3)

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放課後。

先生に委員会の仕事を頼まれていつもより帰る時間が遅くなってしまった。

早く帰ろうと早足で教室に向かうと、中に見えた人影。

「…あ！！」

目が合った瞬間響いた大きな声に体がビクッとなる。

続けて聞こえた「声でかいから」と呆れる声。

「水瀬さん、初めまして！！3組の綾瀬里穂です！」

突然目の前まで走ってきた相手。

そのまま私の両手を握りぶんぶんと上下に揺らした。

勢いが凄すぎて圧倒されていると

「おい里穂、水瀬さん固まってんじゃん」

「あ、ごめん！！私加減バカで！」

『えっと…』

後ろからひょこっと顔を出した深澤君。

「水瀬さん、ごめんいきなり。
こいつ俺の幼馴染なの」

「あのね、私水瀬さんと友達になりたくて」

『…え？』

「覚えてないかな。入学した頃私屋上で先輩に絡まれちゃって、その時水瀬さんに助けてもらったの！」

屋上で、助けた？

数少ないこの学校で人と関わった記憶を辿る。

……あ。

もしかして。

一度だけいつもの屋上のスペースで寝てた時に下から声が聞こえてきた事があった。

数にして4.5人の女子の声で、鍵もかかってない屋上だからやっぱり人入ってくるよなぁと思ってたら

その声は次第に大きくなった。

ちらっと下を覗いたら1人の女子生徒が周りを囲まれながら色々言われていて

可哀想、よりもうるさいし早くどっか行ってくんないかなというのが率直な感想だった。

よくある女同士のトラブルっぽいし、外でやってよって。

そんな風に冷めた目で見ていたんだけど

全然屋上を出て行く気配も無くて、もう少しで休憩も終わるから私もここを降りないといけないし

かと言ってここにいるのバレたらめんどくさいし

間をとって、缶コーヒーの空き缶をその辺に投げて落ちた音で驚かすという古典的な方法を取った。

予想通り先生でも来たのかと勘違いしてバタバタと走り去る足音。

これで解決、と思ってたら

下から「…ありがとうございました！！」と聞こえて

すぐに走り去る音がして静かになった。

顔は見えなかったけど、あの時の？

『…何で私だって分かったの？』

「あの後、屋上の階段から降りてくる水瀬さんが見えたから。その後もたまに屋上に向かって上がってるの見かけてたの」

その言葉に驚く私を見て、ふふっと笑った。