仮面のシンデレラ【Tatsuya.F】2 (ページ19)

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深澤君おすすめのラーメンはすごく美味しかった。

行きつけのお店らしく気さくな店長さんがサービスで色々トッピングしてくれた。

奢ると言って聞かない深澤君と、自分で払おうと財布をしまわない私の攻防を店長さんに笑いながら止められて結局深澤君に奢ってもらう事に。

近くの公園に移動して、自販機で買った缶コーヒーを深澤君に渡す。

「ちょ、いらないって言ったじゃん」

『それじゃあ私の気が晴れないの。ほら、受け取って』

渋々と言った様子で受け取ってくれた深澤君。
水瀬さんって意外と頑固だよねと呟いていた言葉は無視しておく。

さっき映画館で買ったコーラを袋から取り出した。
氷は溶けて炭酸も抜けてるけど、まぁ気にしない。

「それ、もう味抜けてんじゃないの？」

『大丈夫大丈夫。残すのもったいないし』

「ふは、そっか。じゃあこれ遠慮なく」

プシュッと缶コーヒーが開く音が響く。

都会から外れて静かな公園。

空はまだ青くて、ゆったりとした時間が流れている。

「あー…何かここ落ち着くね」

深澤君も同じ事を考えていた様だ。

ちらっと横を見ると、両手を空に伸ばして気持ちよさそうに目を瞑ってる深澤君。

その時、伸ばしてた二の腕に擦り傷があるのが見えた。

Tシャツに隠れててさっきは見えなかった場所。

『…どうしたの？ここ』

「へ？」

ここ、と指差すと腕を捻って傷を確認してる。

「あぁ、この前アクロバットした時に擦ったとこかな」

怪我したことすら忘れてたらしい。

『ちょっと待って。…あった。はいこれ』

カバンの中に入れてた絆創膏を渡す。

「え、いいよ！これくらいよくある怪我だし。舐めときゃ治るから」

まぁここは流石に届かないけど、と笑う。

受け取らずにそのまま返された絆創膏。

擦り傷、とはいえ結構大きな傷だったから

『じゃあそのままこっち見せて』

「え？…わ、ちょ」

ペリッと絆創膏を剥がして、ガッと深澤君の腕を掴んで勝手に貼った。

ちょっと歪んだけど許容範囲だろう。

腕を離すと、驚いた顔の深澤君と目が合う。

『…傷ってね、放っておくとどんどん大きくなるの』

『どんなに小さな傷でも、自分が気づいてあげないと。…取り返しのつかない事になってからじゃ遅いんだから』

真っ直ぐと深澤君を見てそう呟いたら、目の前の瞳が一瞬、揺れた。