5. 深澤side ページ5
深澤side
向井「ふっかさん、飯行こーや！」
仕事が時間通り終わり、楽屋でさっさと荷物をまとめる。
深澤「わり。今日寄るとこあんだよ」
スマホで地図を調べる。
タクシーで30分くらいか。
後ろでえーっと嘆く康二の声。
深澤「んじゃお先に」
キャップとメガネをかけてその場を後にした。
渡辺「…女か？あれ」
岩本「さぁ？」
向井「なーしょっぴー飯行こ！」
タクシーの窓に強く雨が打ち付けている。
下手したら昨日より降ってるかもしれない。
季節は冬手前。
この寒さに雨は正直辛い。
深澤「あ…運転手さん、ここで大丈夫です」
大通りの隅で止めてもらいタクシーを下りる。
首に巻いたマフラーに顔を埋めながら記憶を頼りに裏通りに入った。
昨日は急に雨が降ってきて焦って走ったんだよな。
何で昨日の俺はわざわざ知らない道の裏通りに入ったんだろうな。
自分の行動を謎に思いながらも傘を差しながらゆっくり足を進めると、見覚えのあるランプ。
【喫茶 菖蒲】
喫茶…何て読むんだろこれ。
ランプに照らされた入り口。
ドアにかけてあった看板はopenになっていた。
ギイッと音を出して開けたドア。
思い出す独特な木の香り。
店内には誰もいなかった。
暖かくてコーヒーの香りもするから誰かいるとは思うんだけど。
深澤「…こんにちはー」
昨日と同じ様に声をかける。
すると、パタパタと奥から足音がした。
『いらっしゃいま…あ』
深澤「あ…どうも」
ひょこっと姿を現したのは昨日の店員さんだった。
俺の顔を見るなり何かを思い出した様に、ちょっと待っててくださいねとすぐにまた中に戻っていった。
まるで昨日と同じ様な光景。
また足音が近づいたと思ったら、店員さんの手には小さな袋。
『忘れ物、ですよね？』
はい、と渡されたそれは
フープピアスを包んだビニールの紫色の袋だった。
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作者名：mamemiya
| 作成日時：2023年1月29日 1時
