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深澤「俺忘れ物しすぎですよね」



何も気にする様子もなく笑顔で話しかけてくる深澤さん。



『…そうですね』


深澤「…?どうかしました?」



少し距離を取ろうとしたらこちらを覗き込む様にまた離れた距離が縮まる。



『何でもないです』



一歩離れて距離を取ると



深澤「何か距離遠くないですか」


「そんな事ないです」



あからさますぎたか、ちょっと困った表情でこちらを見ている。


下手か私。逆に怪しくなってどうする。



そして幸か不幸かこのタイミングでやってきたタクシー。



『ありがとうございました』



ペコっとお辞儀してドアが開いた座席に乗り込むと



深澤「北条さん!これ」



これ、と渡されたお金。


大丈夫ですと返そうとしたけど、いいからと受け取ってもらえなかった。



深澤「気をつけて帰ってくださいね」



ドアに手を置いて優しく笑う。


もう一度ペコっとしたら眉毛を下げてまた笑った。



そのまま走り出したタクシー。


何となく。



ゆっくりさっきまで立っていた場所を振り返ったら
まだタクシーの方を見て立っていた彼。




…最後、変な態度取っちゃったな。
失礼な奴と思われたかもしれない。



それでもいいやと思った。


アイドルなんて一般人の私にとっては遠い存在なんだから。





再び窓に打ち付け始めた雨。


今夜は止みそうにないな。



取り出したスマホは開きっぱなしだった彼とのトーク画面。



すっとその画面を閉じた。



…少しだけ胸が苦しくなった様な気がしたのは
きっと気のせい。
















岩本「ふっかおかえり」


深澤「…ん」


岩本「?何か元気なくね?」


深澤「…何かしたかなぁ俺」





私と同じ様にトーク画面を見てたなんて
今の私が知る由もない。

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作者名:mamemiya | 作成日時:2023年1月29日 1時

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