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喫茶店の前でタクシーが止まる。
『本当にありがとうございます』
深澤「店の中まで運びますよ」
大丈夫、と伝えたのにお店の中まで荷物を運んでくれた。
タクシーから中に入るまでの間のわずか数秒でも結構濡れてしまった。
ハットを取って濡れた服をはらっている深澤さん。
『あの』
深澤「ん?」
『もし良かったら…何か温かいもの食べていきますか?』
さすがにこのまま帰ってもらうのは申し訳ない。
『簡単なものしか用意できないんですけど』
深澤「…いいんですか?」
『はい。何か食べたいものありますか?』
深澤「じゃあ…オムライスとか」
『了解しました。すぐに作れると思うので待っててください』
深澤「え、ほんとに?俺オムライスめっちゃ好きなんです」
ふにゃっという効果音のついた嬉しそうな顔。
オムライス、そんなに好きなのか。
じゃあ、と一言断って厨房に入ってオムライスを作る。
簡単にサラダも盛ってお皿を乗せたトレーを持ってカウンターまで運ぶ。
深澤「わ、めっちゃ美味そう!」
『冷めないうちにどうぞ』
スプーンに乗ったオムライスを一口くちに含むと
目を丸くしてこちらを見てくる。
何も喋らずにじっと見てくるから
『…美味しいですか?』
深澤「美味いっす!うわー卵トロトロだ」
美味い美味いとあっという間に完食。
本当に美味しそうに食べてくれるから、つい笑みが漏れる。
深澤「まじで美味かったです。久しぶりに手料理食べたなー」
『良かったです。…あ、そうだモンブランもありますよ』
深澤「食べます!!」
『…ふふ、はい』
食後のコーヒーも一緒に添える。
私も一杯入れてカウンター越しに向かい合わせに座った。
何か、落ち着くな。この空間。
喫茶店だからという理由だけじゃなくて
多分彼の持つ空気感がそうさせるのかな。
深澤「何か、ほんと落ち着きますねここ」
外を見ると少し空が暗くなってる。
雨はまだまだ止みそうにない。
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作者名:mamemiya | 作成日時:2023年1月29日 1時