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『ちょっとお手洗い行くね』
由樹「ん。先入り口行っとくわ」
だいぶ良い時間になってきた頃。
お会計をしてくれた由樹にお礼を言って立ち上がる。
美味しいお肉とお酒にお腹も大満足だ。
明日も休みだし今日は帰ってからも夜更かし確定かな。
お手洗いを終えて廊下を曲がった瞬間
『わっ』
ドンっと誰かに正面からぶつかってしまった。
その勢いでバラバラと何かが下に落ちる。
財布だったりスマホだったり。
?「すみません!大丈夫ですか」
『大丈夫です。ごめんなさい』
すぐにしゃがんでモノを拾おうとすると、相手も同じくしゃがんだから顔を上げる。
?「あ」
サングラスにマスクをしてるから、表情は見えない。
『?えっと…』
財布とスマホを拾って立ち上がりながら渡すと、
?「この前はありがとうございました」
ゆっくりサングラスを外してフワッと笑った目の前の相手。
『…あ、この前の』
誰だっけと頭がぐるぐる思考を巡らせてすぐに答えが出た。
阿部「良かった、覚えててもらえてて。笑」
この前店までコーヒーを受け取りに来たうちの一人の男性だった。
阿部「こんなとこで会うなんて、すごい偶然ですね」
私よりもずっと背の高い彼は楽しそうに笑う。
『そうですね』
こういう時なんて会話を続ければいいのやら。
すぐに沈黙が生まれる。
阿部「…北条さん、少し今時間あります?」
『え?』
阿部「深澤、実は奥の個室に今いるんですよ。北条さんに直接お礼言えなかった事すごい残念がってて」
奥、と個室を指差して、もし良かったらと笑う。
わざわざいいのに。むしろお礼を言うのはこちらの方だ。
直接お礼なんて律儀な人なんだな。
とはいえ少し賑やかな声が聞こえる空間に一人足を踏み入れるのは正直勇気がいる。
目の前でニコニコ笑う彼にどうしようかと一瞬悩んでいると
由樹「A?」
廊下の奥から由樹が私の荷物を持ってこちらを見ていた。
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作者名:mamemiya | 作成日時:2023年1月29日 1時