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ギィッと年季の入ったドアを開けると、独特な木の香り。
この匂いに包まれる瞬間が一番好きだ。
コポコポと温まるお湯の音。
心を落ち着かせるコーヒー豆の香り。
今日の気分で決める自然の音楽。
今日は何となく、雨の日に聴きたくなるメドレーというタイトルの音楽を流した。
確か午後から雨だったから。
外界の賑やかさから外れた裏通りにある小さな喫茶店。
ここが私の職場であり、私の居場所だ。
座席はカウンターが5席とテーブル席は3席だけ。
カウンターの中から全て見渡せる程の狭い空間。
1人で切り盛りしてるからこの広さが丁度良い。
ドアにかけていたcloseの看板を裏返してopenに。
ちょっと外に出ただけで何だか億劫になる。
太陽は苦手だ。
早く雨が降れば良いのに。
そんなこと考える私はきっと少数派なんだろう。
黒猫が店の前までゆっくり歩いてきて止まった。
静かにこちらを見ている。
晴れの日に似合わない漆黒の色。
『…お前も雨が似合うタイプだね』
”だって晴れは苦手だし”
私の言葉に返事をするかのように
トコトコとこちらまでやってきて
ちょうど良い日陰を見つけると目を閉じてその場に寝転んだ。
まるで自分を見てるみたいで、思わず笑ってしまった。
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作者名：mamemiya
| 作成日時：2023年1月29日 1時
