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ガツンと殴られた様に頭に痛みが走った。
時間が止まった様に思考も止まって、
急に口の中が乾いて、カタカタと手が震え出す。
そのせいで手に持っていた財布を床に落としてしまった。
ガタンッ
『……っ』
音に気づいたのか、目の前のドアがガラッと開いた。
由樹「…A」
目を丸くしてこちらを見る由樹。
『…ご、めんなさ』
由樹「A！！」
気づいたら走り出していた。
周りの音も景色も何も見えないまま、ただがむしゃらに。
後ろで由樹の叫ぶ声が聞こえたけど
振り返ることは出来なかった。
駅まで走って、目の前に止まったタクシーに飛び乗る。
そこからの記憶はあまり無い。
気づいたら喫茶店の前でタクシーが止まっていた。
タクシーを降りて喫茶店の前に立ち尽くす。
ドアの取手に手をかけるけど、開けられない。
『……っ』
急にフラッシュバックする記憶。
学校帰りにここまで来た私に
お母さんがドアを開けて手招きする光景。
こういう時も思い出すあの笑顔。
それは大好きな笑顔のはずなのに。
ポツ…
頭に感じた水滴。
ポツポツとその数は増えて、一気にザーッと私の体を濡らす。
ゴロゴロと遠くから雷の音も聴こえる。
いつもは心地いいと感じる雨音が
『……嫌っ』
今は頭にガンガン響いて、息が苦しくなって
その音を聞きたく無くて耳を塞いでしゃがみ込んだ。
胸が苦しい。
頭が痛い。
息が出来ない…っ
「……北条さん！！」
意識が遠のきそうになった瞬間、バシャバシャと響く足音と一緒に聞こえた私を呼ぶ声。
雨音でかき消されそうな音のはずなのに
耳を手で塞いでるから聞こえないはずなのに
すっと私の耳に響くその声。
急に体を濡らす雨があたらなくなった。
ゆっくり目を開けると、すぐそばに見えた靴。
「ちょ、大丈夫ですか！？」
耳に手を当てたまま視線を上げると
そこにいたのは
目線を合わせて傘を差したまましゃがみ込んだ深澤さんだった。
深澤「…っ。とりあえず中、入りましょ！」
私の顔を見て眉毛を下げて
体を支えてもらいながらゆっくり立ち上がる。
おぼつかない手で財布に入れていた鍵を差し
二人閉めていた喫茶店の中に入った。
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作者名：mamemiya
| 作成日時：2023年1月29日 1時
