17.あなたが植え付けた ページ18
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好きです。多分、誰よりずっと。
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笑う時目尻を下げる、その目も。
笑う時、つられて指をおでこに持っていく癖も。
あはは、って肩を震わせて笑う笑い方も。
ちょっと焦げたその肌も。
近くに寄った時ほわん、と薫る柔軟剤のような匂いも。
唇から紡がれる、私の名前を呼ぶその声が一番好き。
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背中を見つめて、心の中で何度も何度も叫ぶ。
好きです。大好きです。離れたくないです。好きです。堪らなく好きです。
幾度となく伝えるけれど、その思いは目の前にいる人には伝わらない。…いや、いっそのこと伝わってしまえば楽になるのだろうか。
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「…あの？どこまで歩くんですか？」
智「んー、もうちょい」
「お店、開店時間になっちゃいますよ」
智「んー、今日は休み」
「…は？」
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じゃあなんで私を呼びつけたんですか、と反撃の一言を息と共に吸い込んだ時。
ぴたり、と大野さんの歩く足が止まる。
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智「Aちゃん」
「…向日葵、ですか？」
智「そう。俺が植えたの」
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とある民家に辿り着いた、と思ったら表札には「大野」の文字。
その前には何本も植えられて、立派に上を向いている黄色い花。夏の象徴、向日葵の花。
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なんでここに連れられたんだろう、という疑問が頭の片隅に生まれたけどそれを口にしたら何かが壊れてしまいそうな予感がして
私は何も言わず、ただじっと向日葵を見つめた。
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玄関の左側に4本、右側に3本。合計7本植えられていた。
あのー…、って口を動かそうとした瞬間
優しい瞳と目が合った。
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智「俺はAちゃんの気持ちには応えられないよ」
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ちりんちりん…とどこからか、風鈴の悲しい音が風になって私の耳に流れた。
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目を大きく見開く。時間がゆっくり流れる感覚。
大野さんの背後で夕暮れが沈む音色。
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なんで。まだ何も言ってないのに。もしかしてさっきの言葉が伝わってた？そんなことあるはずがない。
なんで、なんで、って頭が軽いパニックに陥っちゃって
子供の私は、身体が先に反応してしまってじわりと視界が滲み出した。
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