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｢あのっ…体育祭かっこよかったです…！｣
｢ふふっ、ありがとう｣
クッキーをくれたという茶髪の女の子。
話しかける勇気が無くて勝己に任せたと言っていたけれど、あの勝己に話しかける時点で君には十分勇気があると私は思うよ。
まさか私の事を応援してくれているなんて思わなくてハグまでしてしまったけれど、本当に嬉しい。
｢クッキー美味しくいただくね！｣
｢はいっ…！｣
｢あの…私も今度差し入れしてもいいですか…？｣
｢えっ、いいの？ありがとう嬉しい〜｣
続いて彼女の友達もそんな事を言ってくれるものだから、私の気分は最高潮である。
そんなこんなで知らないうちに何処かの科の男の子まで集まり始めていて、｢連絡先教えて！｣なんてスマホを差し出され少し困り始めた頃。
誰かに両腕とお腹に腕を回され、勢いよく、しかし優しく後ろに引かれた。
｢ちょっとごめんね〜｣
｢あっちの席でこの子待ちの暴君がいるもんでさ〜？｣
｢すまねえが貰ってくぜ！！｣
顔を見ずとも声で分かる。
電気、鋭児郎、そして範太。
暴君とは恐らく勝己の事で間違いないだろうが、少し困っていたので正直助かった。
｢ごめん、ありがと｣
｢いいよ、爆豪怒ってっから早く行ってあげな？｣
｢なんで怒ってるの…？｣
耳打ちするように範太にそう言われ、もう一度女の子にお礼を伝え逃げるようにその場から去る。
｢じゃあ俺の連絡先教えてやるよ！ほら！スマホ出せって！｣なんて電気の意味の分からない会話が聞こえてくるけれど、男の連絡先なんて貰ってなにが嬉しいのだろうか。
｢ただいま｣
｢…ン｣
｢怒ってるの？｣
｢ンでだよ｣
｢範太が言ってた｣
思ったより静かな勝己。
しかしちょっとムスッとした感じがあるので不機嫌なのは確かなのだろう。
すると、隣からギリギリ聞き取れる程の声量で勝己がボソリと呟いた。
｢…知らねェ奴にほいほい連絡先教えんじゃねぇぞ｣
…ああ、なるほど。
そう納得した私の顔はきっと物凄くニヤけているだろう。
｢は〜ん、勝己くん嫉妬かい？｣
｢あ"っ！？｣
｢女の子にも男の子にもモテモテな私に嫉妬ですか！｣
｢いい加減にしろよテメェはぁあ"あ"っ！！｣
轟く、爆発音。
周りの人達が驚く中、私は満面の笑みで本日2度目の逃亡劇を繰り広げた__
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作者名：HamA | 作成日時：2021年10月9日 7時
