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｢っ…お父さんっ！！！｣
夢の中で必死に叫び続けるまま私は目を覚まし、視界に広がる景色に自分が倒れた事を思い出す。
無理矢理体を起き上がらせたせいで痛む頭を強く抑え、布団に蹲った。
｢っ…やばい、忘れちゃう｣
数秒間強く目を瞑った後、夢で見た父の別の姿を何かに書きとめようと辺りを見渡す。
引き出しを乱暴に開ければ何かの説明書の様なものがあったがペンが無い。
もう探している暇は無いと指先を噛み、自らの血でペンを創り出した。
｢絵…は無理…特徴でいい…｣
思い出せ、思い出せ。
夢なんて物は直ぐに忘れてしまう。
絵は描けなくとも、特徴を抑えて警察の似顔絵捜査官に伝えればいい。
出来るだけ細かく、思い出すんだ。
きっとこれは、皆が知りたかった情報に違いないから。
｢…取り敢えず、これでっ…｣
殴り書きにも程があるほど汚い字。
それでもその特徴を何度も復唱し、忘れないようにと頭に刷り込んでいく。
しかし不思議な事に、いつもは夢の内容なんてすぐ忘れてしまうのに鮮明に思い出せる2人の男女の顔。
｢そもそも…なんで…？｣
父は私と同じ個性では無かったのか。
いや、しかし私はこの目で父が自身の血を操り私を守ろうとしたのを見ている。
複数個性？オールフォーワンと共にいたのならそれもありえるのだろうか。
考えても考えても浮かぶ疑問は1つも解決することなく、代わりに頭痛をもたらす。
｢っ…くそっ…｣
気分が悪い。
水でも飲もうと布団から出た時、閉まるカーテンの向こうの暗闇に今は夜かと時計を探す。
壁掛け時計の短針は1を指していた。
｢夜中か…｣
あまり部屋から出ない方が良いかと思ったが、気分転換も兼ねて自販機まで歩こうと廊下へ一歩踏み出した。
左右を見渡せばすぐそこに広間があり、何台も並んだ自販機が消灯した病院内を明るく照らしている。
暗い病院内に少し震えながら歩を進め自販機の前に立った時、そういえば財布が無いことに気付き溜息をついた。
｢…財布…何処にあるかな…｣
コスチュームのポケットに入ったままだろうか。
そんな事を思いながら踵を返そうとした時、突然感じる肩への重みと、鼓膜を揺らす低い声。
｢A｣
｢ﾋｯ…！｣
今年一情けない声が、廊下に響き渡った__
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続く (更新停止中)
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作者名：HamA | 作成日時：2021年10月9日 7時
