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それから1時間後。
あまりにも遅い私を心配して来てくれたしょう兄に連れられ、イヤイヤながら寮を出た私は護衛の人と共に病院へと向かった。
道中、勝己へ『めんどくさいよう』なんてメッセージを送れば、帰ってきたのは『文句言ってねェで調べ尽くしてもらって来い』という鬼の様な返信。
｢調べ尽くしてもらって来いってなに…｣
謎な日本語に1人呆れたような笑みを零し、窓の外へ視線を向ける。
丁度通勤時間だからなのか、車は思うように進まない。
少し進んではまた止まる車に揺られながら、｢…あ、猫｣なんて呑気に外を眺めていれば、病院への長い道のりもあっという間に過ぎていった。
｢ありがとうございます。また後で｣
車の横で礼儀正しく頭を下げる護衛の方にお礼を伝え、この堅苦しい空間から逃げるように病院の自動ドアをくぐる。
護衛と言っても常に私の傍についている訳ではなく、病院に入ってしまえば私は意外と自由だ。
｢おはようございます。検査に来ました｣
｢あら、おはよう緋龍さん。案内するわね｣
挨拶をしながら受付に顔を出せば、いつものお姉さんが可愛らしい笑顔を覗かせる。
そりゃもう何回も此処に通っているのだ。受付のお姉さんとも看護師さんともそれなりに仲良くなっている。
｢今日って、検査いつも通りの時間で終わりますか？｣
｢え？…ああ、うん。そうね。特に特別な事は無いわよ？なにか予定あるの？｣
｢ちょっと、午後の授業には絶対出たくって｣
そう言えば、｢あっ！復学したのね！おめでとう！｣なんて祝福の言葉を送ってくれたお姉さんは、学校に通えなくて寂しがっていた私をずっと心配してくれていた。
｢ありがとうございます｣とお礼を伝え、辿り着いた診察室前でお姉さんと別れる。
入れ替わるように出てきた看護師さんに案内され、診察室の椅子に腰をかけた。
｢調子はどう？変わりない？｣
｢全然元気ですよ。…ああ、でもちょっと。個性のコントロールが上手くいってなくて｣
なんて、頬でチリッと揺れる炎に呆れた笑みを零し、途中で入室してきた先生といつものなんら変わりない診察が始まった。
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作者名：HamA | 作成日時：2021年10月9日 7時
