431.爆豪 ページ31
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寝付けなかった夜も明け、朝。
｢…おはよ｣
｢…お前、どうしたその目｣
エレベーターでたまたま行き会ったA。
心底だるそうな様子を見るに、部屋に戻った後も暫くは起きていたのだろう。
それにしてもなんだその腫れた目はと、無駄に擦る彼女の手を掴む。
｢擦んなやアホ｣
｢ん〜…？結構ひどい…？｣
｢別にそこまで酷くねェ、…だァから擦るなって言っとんだろ｣
｢ンー…｣
掴んだ方とは逆の手でまたも擦り始めた彼女は、どうやらまだ頭が覚醒していないらしい。
俺の言ったこともまともに聞いちゃいない。
ンーンー言いながら擦るのを辞めない彼女の両手を拘束すれば、俺の肩に顔をグリグリと押し当て始めた。
｢おい、いい加減起きろ｣
｢おき…てる…｣
｢今のお前は起きてるって言わねぇんだよ。…っだァオラ、着いたから降りろ｣
エレベーターの扉が開き、遂に俺に体重をかけ始めたAを引き摺るようにエレベーターを降りる。
数歩歩いたところでもう面倒臭いとそのまま彼女を担ぎ上げ、クラスの奴らのギョッとした視線を浴びながらソファへと下ろした。
｢なに緋龍、寝てんじゃん｣
｢おーい緋龍さーん。朝ですよー？｣
｢寝不足か？｣
そんな中でも切島達はいつも通りで、ソファでまるまっているAに、｢ほら、Aちゃん起きなさい。朝よ？｣なんて茶番を繰り広げ始めた。
まあ起きねぇだろうなと俺は諦め、食堂に向かいAの分の朝食と、暖かいココアを入れまたソファへと戻る。
｢A、飯｣
｢…めし｣
｢ン、起きろ。ココアも入れた｣
｢…ココア｣
飯好きな彼女にはこれが一番得策だろう。
いい香りを漂わせ、案の定釣られて目を開いた彼女の頭を支え、ソファに座らせる。
｢緋龍、目めっちゃ腫れてんじゃん｣
｢ン…そう…｣
｢うわ、どうしたんだよそれ。泣いた？｣
｢泣いてない…｣なんてか細い声で呟いた彼女の顔は何処か寂し気で、色々思い出して部屋で泣いたんだろうと何となく察した。
切島達もそれに気付いているのかあまり納得していないようだったけれど、無理に聞くことでも無いと思ったのか、軽く流していたのは正解だろう。
｢…かつき｣
｢ンだよ｣
｢…ありがと｣
｢ン｣
そんな短い会話を終え、ちびちびと朝食を食べ始めた彼女の横で、俺も程よく焼けた鮭に手を伸ばした。
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作者名：HamA | 作成日時：2021年10月9日 7時
