緋色 Part.9

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｢…やめよ。考えても仕方ない｣

悶々とする頭を晴らすように大きく左右に振り、水飛沫を散らしながら立ち上がる。

気持ちを紛らわそうと鼻歌を歌いながら髪と体を洗い、お風呂を出た頃には時刻は1時を回ろうとしていた。

｢やっべ、服忘れたー…｣

そんな中、散らばった服の中から新しい下着を取り出し身にまとった後、ズボンを履き、いつものようにパジャマ代わりにしているスウェットを着ようとしたがどこにも見当たらない。

流石に汗でまみれた服をもう一度着るのは嫌だ。

｢キャミ着てるし…誰もいないし…、いっか｣

別に下着姿な訳では無いしもう1時だ、誰もいないだろう。

そんな浅はかな考えで纏め、洗面台へと向かい髪を乾かす。

だいぶ伸びた髪を手ぐしでとかしながら、右肩にある大きな傷に目が止まった。

｢消えないかなー…、無理か…｣

保須市でヒーロー殺しと対峙した時に負った傷。

続いてキャミソールを捲り、お腹の左下辺りにもある傷跡をそっと撫でる。

｢無茶した自分への戒めだな…こりゃ…｣

勿論、女である以上体の傷は多少気にはなるけれど、ヒーローを目指している上でそんな事毎回気にしていたらキリがない。

…が、これはちょっと大きいし、少しむごい。

｢まあ、誰に見せる訳でも無いしいいか…｣

お茶子達にはちょっと怖がられちゃうかな。

なんて、皆でお風呂に入る時の言い訳を考えながら大浴場を後にする。

きっと外は冷えきっているのだろうが、寮の中は過ごしやすい温度でこんな格好でも寒さを感じない。

｢…静か｣

いつもならA組の皆がいて騒がしい共有スペースも、音1つしない静かな空間だ。

窓の外を見れば辺りは月明かりに照らされているようで、室内よりも幾らか明るいようだった。

そんな時、低い声が鼓膜を揺らす。

｢…オイ｣

｢っ…！？｣

辞めろ、突然声をかけられたものだから驚きで悲鳴をあげるところだった。

なんて心臓をバクバクさせ後ろを振り返れば、そこには訝しげな顔をした勝己が立っていた__

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