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｢っ…！？…っはあ…はあっ…！クソっ…！｣
夢の中で感じた衝撃と共に夢から覚め、額を伝う汗と溢れ出す涙を無造作に拭う。
二度も目の前で大切な人を失った悲しさと虚しさに、思わず枕を掴み床に投げつけた。
最悪だ。手が震える、汗も涙も止まらない。
｢っ…落ち着け…落ち着けっ…！｣
徐々に乱れていく呼吸を落ち着かせようと自分にそう言い聞かせ、胸元をさする。
大丈夫、あれはもう何年も前の事だ。
乗り越えただろ、もう平気な筈だろ。
今更取り乱すなと喝を入れ、深く呼吸を繰り返す。
｢はあっ…、もう…最悪…｣
今になってどんな夢見せるんだよと舌打ちを零す。
服の袖口で汗と涙をもう一度拭い、時計を見れば時刻は0時半。
｢…お風呂…入ろ…｣
汗が酷い、この嫌な気持ちも一緒に流してしまおうとタオルと下着を引っ張り出し大浴場へと向かう。
もう誰もいないからいいかとそこらに服を脱ぎ捨て、シャワーの蛇口を思いっきり捻る。
出てきたのはお湯では無く水だったけれど、そんな事なんてもうどうでもよかった。
｢はあっ…｣
もう一度盛大に溜息を吐き、水を止める。
冷えきった体のままお風呂へ足を入れれば、温度差からなのかやけに熱く感じるお湯。
一瞬足を引っ込め、慣らすようにゆっくりと浸かる。
【…A、大丈夫か】
｢っ…あ…ああ、ごめん。起こしちゃったね、大丈夫だよ｣
【体調が悪いのか？】
｢ううん、嫌な夢見ただけ。大丈夫だよ、おやすみ｣
【…何かあれば呼んでくれ、おやすみ】
頭に響く迦楼羅の声にそう返し、首元までお湯に浸かる。
全身を包む温かさに、幾らか気持ちも安らいだ。
｢…2人共、何に焦ってたんだろ｣
そして、落ち着きを取り戻し思うのは当時は気付かなかった2人の焦り具合。
あの時母は出来上がった夕飯を普通に食べようとしていたし、あの場でいきなり外食にするのはおかしな話だ。
｢…なんだか__｣
何かから逃げていたような。
そして、赤信号で停止している間に真っ直ぐにこちらに突っ込んできた大型トラック。
あまりにも早かった、私を守る2人の動き。
__まるで、何かが起きるとわかっていたかのようだった。
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作者名：HamA | 作成日時：2021年10月9日 7時
