緋色 Part.9

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『紅一さん…？』

『ちょっと来てくれっ…。A、夕飯の支度お願いしてもいいか？』

｢…え？…あ、うん｣

『ありがとう』

久々に会う父に驚いている間に、父は母を連れ隣の部屋へと入っていった。

そういえば、前も急いで帰ってきた父がいきなり母を連れて別の部屋に行って、私がご飯の支度をした時があったな。

なんてデジャブを感じながら、ご飯を茶碗へよそう。

__…待て、前も？

前…とはいつだ。

いつの事だ、思い出せ。

｢っ…いつだっ__｣

これは夢だ。

デジャブじゃない、その日の出来事を私はまた夢見ている。

『Aっ…今日は外へ食べに行きましょう。ほら、準備して？』

｢えっ？でも出来てるのにいいの？｣

『いいよ、明日食べましょう？』

『A、今日は父さん奮発しちゃうから。早く準備しておいで？』

いつの出来事なのか思い出せず悶々としていれば、突然リビングに戻ってきた父と母に、今日は外食だと準備を急かされる。

もうご飯は出来上がっているのに、何故。

そういえば前も同じ事を思ったな。なんて違和感を感じながら、何故か急ぐ2人と共に家を出た。

｢お父さん、どこ行くの？｣

『少し遠いところなんだ、ちょっとドライブしようか』

『お腹空いた？ごめんね、ちょっと待っててね』

そうか、少し遠いところなのか。

｢わかった｣と一言、シートに体を預けネオンが輝く街並みをぼーっと見つめる。

前から母と父が何か小声で話す声が聞こえるけれど、よく聞き取れない。

『A___けは__！___んだ__！』

『__かっ___わっ___！でも___だ___』

僅かに聞こえる語気の強い会話に、揉めているのかと声をかけようとした時。

視界にうつる、赤信号。

｢っ…！｣

小学6年、中学に上がる前の春休み。

夜、ネオン街。

赤信号、右、迫るトラック。

思い出す、あの日の記憶__

｢ダメっ_______｣

衝撃。

回転する視界、浮かぶ体。

__ああ、クソ。これは…。

あの日の、交通事故の夢だ__

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