Ｍｉｒｒｏｒｂｏｒｄｅｒ２ (ページ1)

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抜き打ちページ1

朝食を取った後、いつもより早くに家を出た。学校に向かいながらチェルはカオルについて語る。
「カオルはね、歌がとても上手なの。誰もが聞きほれるくらいに。私なんてその歌声で癒されるもの。でも…私よりも感動している人がいるのよ。ほら、あそこを見て。」
そう言われて道すがらにある林の隙間に誰かがいるのが分かる。
「えっと…この場合は…あ、『結晶魔法』…あ！木が！どうしようッ！？」
チェルは若干呆れたような顔でこう言った。
「彼は『ハルヴァ・レジスタ』。周りからは『ハル』と呼ばれているの。ただ魔法は一流なんだけれどとても小心者なのよ。」
本番とかに弱くて…と言いながら無効化魔法を繰り出す。遠くでいきなり結晶が消滅して驚いている。…かなりのビビりだな、これはもう大勢の中で何かやることはほぼ不可能に近いだろう。近くで茂みが揺れ、黒髪で青いメッシュの入った紫色の瞳を持つ青年が出てきた。
「あ、誰かいると思ったらチェルとカヲルか…。ビックリした…。あ、もしかして結晶魔法解いたのも…？」
「えぇ、朝から熱心ね。でも魔法を極めるより気持ちを鍛えるべきじゃなくて？」
確かに、魔法は一流だというのなら後は本番で出せるかの話ではある。肝が据わってなければできるものも出来なくなる。
「う、うん…。で、でもボクあんまり、そういうの得意じゃないし…」
「もっと自信を持てばいい話じゃないか。お前はちゃんと出来るんだろ？誰よりもすごいんだとアピールしろよ。」
「うぇ！？？う、ん。そうだけど…。で、出来ないよ…。皆すごいし…」
コイツ相当なコミュ障と見た。そして自分に相当な自信がない。なんだかなぁ…。
「よし、一回だけ抜き打ちするぞ。今から出す魔法を打ち消せ。『帯電魔法』」
ニヤリと口角を上げ、電気を帯びた拳を構える。ハルはいきなりの事で驚き軽くパニックを起こしつつある。俺はゆっくりと拳を振りかぶる。
「え、え…！ぁう…ッ『錬金魔法』！刃よ！」
『ガキンッ』
「はぇ？…はっ！カヲル！大丈夫！？ゴメン！咄嗟に刃なんて出して…！怪我してない…？」
刃がこっちに向かってくるときに俺は反射的に『創造魔法』で薄いが盾を作った。勿論電気は帯びている。あっぶねー…。まぁでもアレだな。
「一応電気を逃がすってことで金属を出したのは正解だ。何とかできているじゃないか。」
「ほんと？よ、かったのかな…？」
チェルには結構痛いデコピンを喰らい、危ないだろうと説教されながら登校した。