chocolate...3【黄】 (ページ39)

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bitter...12 ページ39

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【Hikaru side...】

『後から聞きたくもないのに知っちゃったんだけど、
　金銭のもつれ？とかいう理由らしい。

　お父さんが知り合いにお金借りてて、
　その人がなかなか返してもらえず
　痺れを切らして返せって言いに来たらしいの。

　んでなんでその人が殺されないといけないわけ？
　って感じだよね…』

淡々と話すAを
俺は何も言えず、ただ見つめるしか出来なかった。

その時のAの目は
見たことないくらい真っ暗で
完全に光を失っていた。

『もう18年前とかになるかな…

　その当時結構なニュースになってたんだけど
　知らない？〇〇殺人事件って。』

そう言われてうっすらと記憶にあった。
俺と同じ歳の子供がいる親が人を殺したとあって、
当時両親が食い入る様にニュースを見てた覚えがある。

『ごめんね。
　どこで何やってるか分かんないなんて嘘ついて。

　照の素敵な両親を前に
　私の父親は今、捕まってます。
　人を殺してしまって刑務所にいます。
　なんて言えなかった…』

照「そんな…」

なんて言葉をかけていいかわからなかった。
Aの気持ちを思うと、
辛くて苦しくてたまらない。

『…照には、嫌われなくなかった。
　だから…どうしても言えなかった。』

そう静かに涙を流した。

照「A…」

そんなことでは嫌わないよ。
親がどうであれAはAだろ？

そう言えば良かった？
そう言いたいのになぜか出てこなかった。

『…そんな父親が、大嫌いだった。
　お母さんに会いにくればお金くれお金くれって。
　それしか言えない父親が本当に嫌いだった。

　ましてや、人を…っ』

そこまで言って言葉を詰まらせたAを、

俺は抱きしめることができなかった。

この時、俺が大丈夫だよって言葉をかけてたら？
腕を引いて抱きしめてたら？

俺たちは今も一緒にいられたのかな？

俺は結局いつも、選択を間違えて
Aを傷つけてしまう。

Aに触れようと
伸ばしかけた手はAの最後の言葉によって
ただ引っ込めることしかできなかった。

『…そんな父親が、出てくる。

　殺人者の父親が刑期を終えて釈放されるらしいの。

　だから、しばらくは店には来ない方がいいよ。

　ごめんね。こんな彼女で。』

そう力無く謝るAの目は
相変わらず真っ暗だった。