ナイトとツンデレ (ページ33)

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ナイトとツンデレ32 ページ33

コツコツコツとガラスの靴を鳴らしながらスタジオに入るとそこにはもうレオの姿があった。
knightsの服とそれほど変わらないような服を着てこちらに手を振っている。

『おっ、きたきた～。かわいいなっ似合ってるぞ！』

『…お世辞でも嬉しいわ、ありがとう』

そして監督からの説明があり構図などを言われる。
今回の撮影は服の通り姫と騎士が主なイメージだ。
それから手にキスをしたり月をバックになどと様々な写真を撮ったりしていったん休憩に入る。

(…ちょっとやばいわね、これ。
腫れてきたし痛みも尋常じゃないわね。)

廊下に出て誰もいない事を確認して靴を脱いでみると、白い足首は赤く腫れ上がっており酷いところは紫になっている。
だが(人1)はふぅとため息を吐いただけで再び靴をはく。
本当は履いただけでも痛いはずなのに物ともしない優雅な動きでスタジオへと戻る。

『おっ、(人1)ちゃんもう準備はいいかな？
ではスタンバイお願いしま～す…と、レオくんちょっといいかな？』

監督がレオを呼んでなにやら打ち合わせをしている。
歩いたせいもあってか足は熱を帯びてジンジンと痛む。
せめて顔には出すまいと思っているとレオが戻ってきて撮影再開だ。

(次はレオが私の顔を上げて見つめるシーンだったかしら。)

記憶は的中し、レオが(人1)のあごをくいっと上げて見つめ合う…というよりもレオの顔がどんどん近づいてきて…。

『え、えぇっ!?ち、ちょっとれお!?』

ちゅっと微かなリップ音と共に額に暖かい感触がした。

『いやぁ～(人1)ちゃんは構図通りの表情をくれるのは助かるけどそんな表情も撮りたくてね～！レオくんにお願いしてみたんだけどいいのが撮れたよ！』

そう言って笑う監督は本当に嬉しそうだった。
私はしばらく呆然としていて怒ることも忘れていた。
そんな私の頭を優しくぐしゃぐしゃと撫でてレオはこんな事を口にする。

『おまえもそんな顔するんだな。
叩かれると思ったけど、そんな年相応な表情もできるんだな！わっははは☆』

いつもなら怒るはずなのに今日は怒る事すら忘れるほどの事だったのだろうか。
呆然としていた(人1)はふと思った事を口にした。

『あなた…誰にでもこんな事するの？』

『いいや？(人1)だけっ！だっておれ、おまえの事大好きだしっ☆』

『…ありがとう。私もあなたのこと、嫌いじゃないわよ。』

そう微笑む(人1)は少し儚く見えた。