210.嵐の前の静けさ…side J ページ20
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智「明日から冬休みねー」
潤「なんでアンタがここにいんの」
智「保健室で今頃、翔くんと奥村がヨロシクやってるから邪魔しちゃいけないかなーと思って」
潤「奥村って…、あの奥村？」
智「そ。おたくのお姫さまの親友の」
潤「……マジ？」
智「マジ」
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終業式の放課後。今日は早く帰ろうと仕事をちゃっちゃと終わらせてやるって俺の縄張りの準備室に入れば
「あ、じゅんくん」ってふにゃとした癒し効果満点の笑顔を見せつけた白衣のヤロウ。
ソファに座って、まるで自分の縄張りのようにコーヒーを飲んでる姿はどっからどう見てもダメ人間。
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そんなコーヒーの匂いが漂う中、大野さんは窓の外を眺めて繋いだ。
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智「もうそろそろ諦めたら？」
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ズズズ…とコーヒーを啜る音が聞こえる。
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潤「諦めの旅に出てますけど」
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ガチャン、とホッチキスの音を鳴らす。
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智「無理だよ。潤は諦められないよ」
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はぁーっ…とコーヒーのため息をこぼす。
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潤「何を根拠に」
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トントン、と紙を整える音を立てる。
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智「一瞬で好きになった恋なら、忘れられる可能性はまだあるけど」
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ガチャン！とホッチキスが大きすぎる音を立てた。
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智「長年蓄積された想いはそう簡単に風化なんかしてくれないよ」
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タイピングをしながら無心で大野さんの言葉を耳に入れる。
諦めるってなんだ。
ただ気持ちに鍵かけるだけだ。それ以外に何もない。
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でもその鍵が見つからない。
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智「それに」
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大野さんがコーヒーを全て飲み終えて、ソファから立ち上がって流し台にコーヒーカップを置いた。
かちゃんとガラスの音がして、パソコンの画面から大野さんの方に目線を向けた。
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智「年末、じゃん」
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カチカチ、と時計の針が無駄に部屋に響くのが身体全身を貫いた。
年末。
そうだ。
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タイピングしていた手を止める。
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智「チャンスなんじゃないの？ …まつもとせんせー」
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智「略奪愛、って言葉もあるよ？」
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嵐の匂いがする。
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