144.鳴いたよ泣いた ページ10
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カァカァとカラスが夕暮れを背負って鳴いた。
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和也「……じゃあな」
「あ……、うん」
潤「待てよ」
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二宮くんの背中が、ピタリ。と動きを止める。風が吹いて、その風が目に沁みた。
意味もなく泣きたくなる。
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潤くんが我が家のクロックスを履いて、外に出てきた。格好はジャージ。完全なオフだ。
そんな潤くんが私の前に立って、私を背に庇うようにした。
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潤くんの、優しい匂いが鼻をくすぐる。
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潤「お前早退したくせにコイツのこと連れ回してたのかよ」
和也「……」
潤「彼女いんじゃねえのかよ」
和也「……」
潤「いい加減に中途半端にAのこと振り回すのもうやめてくんねぇかな」
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潤「好きじゃないなら、もうAと関わんな」
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ぎゅっ…と髪に飾られたバレッタを掴んで、すっ…と私は手のひらにそれを乗せた。
黄色い淡い色の少し大人っぽいバレッタ。嬉しかった。
嬉しかったし、一生の宝物にしようとも思った。
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でも、そうだった。
危うく勘違いをするところだった。
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彼は、私をなんとも思ってはいなかった。
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和也「……賭けに俺は勝った」
潤「…」
和也「俺がもらってもアンタは何も言えねぇんじゃねぇの？」
「賭け……？」
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え？って縋るように潤くんの背中に手を当てると、潤くんは険しい顔をしていて
二宮くんのことをただ一点に見つめる。そんな二宮くんも潤くんのことをじっ…と見つめる。
どくんと嫌な胸の鳴り方をした。
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潤「……ガキが」
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ぼそり、と宙を舞った言葉は少し棘を含んで
二宮くんのガラス玉の瞳が見開いた。
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潤「好きって感情もわかんないで、好きとも言えないガキに取られてたまるかよ」
和也「……ざけんな(笑)」
潤「木口梨香子を本気で好きになったことがあるとか言うのかよ」
和也「……」
潤「Aを木口梨香子を忘れるために利用しようとしてんなら」
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潤「頼むから、コイツの世界からいなくなってくれ」
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カァカァ、とカラスが鳴いた。
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きっと、私も泣いた。
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