ハロー・セイ・ハロー Part6【K.N】 (ページ29)

今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:661,854 hit

163.勝ち目なんてなかったページ29

.

.

それからしばらくして、ほとぼりが冷めそうになった頃

告発した女子生徒が「襲ってはいなかった」とポツリと口にした瞬間

校内の雰囲気がガラリと変わった。

.

.

二宮くんは騙されたんだ

二宮くんは嵌められたんだ

可哀想

私たちに出来ることならなんでも言って

.

.

どうやら二宮の女嫌いはここから始まったらしい。

.

.

和也『……』

菜月『なんであーやって、手のひら返すかな！和くんに好かれたいからってさ！』

和也『別にいーんじゃねえの。そーいうもんでしょ人間って』

菜月『だって、でも悔しいじゃん！確かに秘密にしてたのはよろしくないよ、でもさ！』

和也『いいよ。』

菜月『いくない！』

和也『菜月が怒ってくれてるから、それでいいっつってんの(笑)』

菜月『だって……』

.

.

学校内はそんなざわつきを保ちながら、受験真っ只中へと向かっていき

澤野菜月は見事、推薦で女子校に入り。二宮は持ち前の冷静さと頭の回転の良さで合格した。

そして彼は、ここの高校に入学をした。

.

.

.

裏切られたとわかっていても

.

彼女を好きなままで。

ギターは弾かないと決めて。

ヘッドホンはかけたままで。

そして

.

お前と会ったんだよ、A。

.

.

.

.

「ーーー…」

.

.

ガーーーッと車窓から覗くのは夜の景色で、もう少しで家に着くところだった。

車窓にぼんやりと映るのは紛れもなく私の顔で、その頬には一筋の涙の痕が残ってた。

.

.

潤「…っと、これが俺が知ってる話。二宮がどう感じてたのかとかはさすがに知らないけど」

「……」

潤「…知らなきゃよかった？」

.

.

背を向けた運転席に座ってる潤くんの声が酷く優しく聞こえて

その声にまた泣ける。

.

.

忙しく動く街に、泣きたくなるこの意味がわからない感情。

.

.

知らなきゃよかった？

うん、知らなきゃよかった。

.

.

だって。

.

.

.

「勝ち目なんかないじゃん……」

.

.

裏切られても、好きでいる二宮くん。

そんな思いに勝てるわけがない。

.

あぁ。

.

.

知らなきゃよかった。

.

.