146.決別の夕暮れ ページ12
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一世一代の大舞台の幕が開く。
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「…やめる」
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ぽつり、と零した言葉に二宮くんと潤くんが反応して
二人の視線が一斉に私に向けられた。
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あのビー玉の瞳。あの中に映れていた。
もうそれでいいや。十分だよ。
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ぎゅっと。潤くんの服の裾をつかんだ。
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「私…二宮くんのこと好きなのやめる…」
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泣くな。泣くな。
泣いたら、演技が台無しだ。
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潤「A…？」
「ずっと二宮くんを好きでいるって思ってたけど、もう疲れちゃった」
和也「……」
「菜月ちゃんと付き合ってるんだし、あんな可愛い子を彼女にされたら私なんか勝ち目ないし」
潤「……」
「……ごめん」
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「わたし、潤くんと付き合う……」
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ぽとん、と落ちたのは私の涙で
あーあ。せっかくの演技がと心の中で笑った。
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潤「A……」
「しつこくまとわりついてごめんなさい」
和也「……」
「話してくれてるだけで奇跡だったのに、本当にごめんなさい」
和也「……」
「きっと、本当は優しい二宮くんだから私のこと邪険に出来なかったんだよね。ごめんね」
和也「ーーー…」
「バレッタありがとう。……最後の思い出になりました」
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パチン、とバレッタの金具を留める。
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その音と一緒に、夕日も落ちた。
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和也「……んだよそれ」
「……」
和也「……ずっと好きって嘘だったわけ？」
潤「お前……」
和也「…悪かったよ」
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和也「じゃーね。いいんちょーさん」
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二宮くんのスニーカー。右足の靴紐が少し緩かった。それを見て、心が痛くなった。
ひらひらと手を振って背中が遠ざかって、やがて見えなくなった。
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潤「……A」
「……じゅんく……」
潤「おいで」
「〜〜〜…っ」
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ポロポロこぼれていく、涙と思い出。
呆気なく、天国にあげられ地獄に落とされた。
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潤「……大事にするから」
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二宮くんの遠ざかっていく背中はどこか丸くて
潤くんの胸に顔を埋めて泣きながら
ふとそんなことを思い出した。
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