91.親指の使い方 ページ10
.
.
身体が凍ったように動かなくて、泣き止め泣き止めという私の想いとは反対にポロポロこぼれていく涙。
そんな私を見て、二宮くんは慌てて向こう側の方からぐるっと周って私の目の前にやって来た。
.
.
和也「ちょ……、いいんちょ」
.
ぅー…って泣いている私を見て、オロオロとする二宮くん。
二宮くんの前じゃ、泣いたことがなかった。いつも二宮くんの前では泣かないって決めてた。
なのに、今は自分でも不意打ち。二宮くんが、私の肩を掴んで顔を覗き込んだ。
.
.
和也「……悪い、からかいすぎた」
「……っぅ…」
和也「アンタが俺のこと好きだからって、ちょっと調子乗った。ごめん」
「………っ…よ」
和也「え？」
.
「にのみやくん、ずるい……」
.
.
ポロポロ、際限なく溢れてくる涙は二宮くんの親指が拭ってくれた。
大きな親指が、ぎゅって私の頬を撫でて涙が彼の指に吸収される。
いいな。その涙になりたい。そう思う私は、かなり重いかもしれない。
.
.
「………っ…好きだもの」
和也「……」
「にのみやくんが好きだもん。でもそんなことされたら、……つらくなる」
和也「…」
「でもそれを上回る、嬉しいが勝つことに私は悔しい」
.
涙のせいでまだ視界はボヤけているけれど
二宮くんの、私が好きなビー玉みたいな瞳が私の顔を直視して覗き込んでいるのがわかる。
恥ずかしすぎて死にそう。なんでこんな時に限ってほっぺにニキビ出来てんだろう。
.
.
「…二宮くんと話せて、うれしいの」
和也「……」
「二宮くんがいないと、つまんないの」
和也「…」
「わかんないよ。好きな理由なんて。わかんないけど」
.
「すっごい好き…………。」
.
.
「俺のどこが好きなの」ーーー…そんな答え、どこにもなかった。
「顔が好き」、確かに顔はかっこいい。「声が好き」聞き心地がいい。「性格が好き」確かに優しい。
でもどれを抜き取っても、足りない。「全部」と言っても、彼の全部を知ってるわけじゃない。
.
幾千の愛の言葉を補っても、きっと足りないこの想いは
「なんで好きなのか」の理由を教えてくれない。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3343人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
