89.走れ！走れ！走れ！ ページ8
.
.
ツゥー…って、背中に気持ち悪い汗が流れた。
.
.
「…わ…たしは…」
.
.
二宮くんが、うん？って私の顔を覗き込んでいる。ファンタの缶が２つ仲良く並んでる。
そんなに直視されたら、話せるものも話せなくなる。なのにずっと彼は私を見てる。
逃げたい。でも逃げたいって思ったって、この状況から脱出出来るわけがなくて私は腹をくくる。
.
.
「私が思う二宮くんの好きなところはーーー…」
翔「二宮！いんのか！」
和也「ゲ」
「……え？」
.
.
すぅ、と息を吸って。ドキドキとうるさい心臓を宥めて。腹をくくって、やっと好きなところをいう準備をしたって言うのに
そんなドキドキは、遠くから聞こえる櫻井先生の怒号で掻き消された。
.
私に雑用を頼んだ先生。「取り敢えず運んどいて？このダンボール。終わったら会議室にいてね。俺、ちょっとしないとなんないことあるから」
そういった「理由」は、今思えば二宮くんの夏の特別補習のことだったのかと合点がいった。
.
翔「サボってんじゃねーぞ！にのみやー！」
.
どんどん先生の声が近くなってくる。恐らく体育館にやって来てるんだろう。
そーいや二宮くん、サボってるって言ってたな。脱走してきたってこと？
これは大人しく先生に引き渡さなければ…と思った瞬間。
.
.
和也「やっべー…」
「二宮くん、補習に戻……」
和也「逃げんぞ！」
「ハイ！？」
.
.
グイッと引っ張られた腕。
ゆっくりと動き出す世界。
.
引っ張られて、立ち上がるとぎゅっと右手を握られて
驚くぐらいのスピードで二宮くんが駆けていく。
なのに、私の目に映る世界はスローモーション。フラッシュが目を掠める。
.
体育館を抜けて、渡り廊下へ。誰もいない学校で私と二宮くんのドタドタという足音だけが響く。
渡り廊下を走っていると、掃除員のおじいさんが裏庭にホースで水を撒いていて
それがキラキラと反射して、夏の虹へと変化する。
.
その水を少しだけ被って、二宮くんがアハハ！って走りながら後ろを向いて無邪気に笑う。
.
.
ぎゅっと手は、繋がれたまま。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3343人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
