93.頭ん中はキミだらけ ページ12
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胸が苦しくて、でもすごい好きで
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翔「…………が」
「……」
翔「……かすが」
「……」
翔「春日！」
「へっ！？」
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もし、あの時櫻井先生が来なかったら私はどうしてたんだろう。
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「いっっったぁ…！」
翔「あー…、もうだから名前呼んだのに。大丈夫か？切った？」
「ちょっとだけ…。すみません、指洗ってきます…」
翔「もしひどかったら、今日保健室に大野先生いるから見てもらいな」
「はい……」
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ダンボールを無事に運び終わった後は、会議室で先生とプリント整理。ものすごい量の。
これ切ってー、と言われてハサミを渡されてボケっとしながら切っていたらピッとした鋭い痛み。
あんなあとに、まともにハサミで紙を切れるはずがない。
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ーーー…和也『……くち。……とじてみて』
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「〜〜〜〜〜〜っ！」
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廊下に出て、水道の蛇口をひねる瞬間にフラッシュバックするさっきの光景。
少し甘い匂いがして、ふわふわ…と前髪がおでこにあたって。二の腕を二宮くんの手が抑えて。
吐息が、頬にあたってーーーー…。
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「ぐわぁっ！」
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ジャーーーッと水を流す蛇口が、キラキラと反射して私は力任せに指の傷を水で洗い流す。
夏だから、少し生温かった。
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今頃、二宮くんは教室で課題をしてるんだろうな。また脱走してないかな。
でも退学は嫌だって言ってたから、一応してるだろうな。
……だめだ、頭ん中が二宮くんでいっぱいだ。
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はぁ……。って溜息を吐いて、蛇口を閉める。幸い、切った指先はそんなに深くなくて
そのまま踵を返して、会議室の方へと戻る。
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……すると。
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智「あっれー。生徒がいる」
「大野先生」
智「あー…、誰かと思ったら翔くんのクラスの委員長さん」
「……はあ」
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白い白衣を翻して、階段を上ってきたのは保健教諭の大野先生。
そういえば、さっき櫻井先生が「大野先生がいる」って言ってた。
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智「夏休みなのに学校でなにしてんの？」
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なんかちょっと。……苦手。
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