９* ページ10
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翌日から彼は私と一緒に行……動するようになった。
……なんというか、ものすごくマイペース。どこかに行ってる時もあれば、そばで懐かしそうに授業聞いてたり。何よりも困ったのが、時々乗り移られることだった。
どうやら、この人はわりと有名人だったらしい。ふとした瞬間に乗り移られた時に友達の口から出てくるのは、｢幸村先輩みたい｣という言葉ばかりだった。
……本当、何がしたいのかわからない。見えるこっちの身にもなってほしかった。
(あー……)
こんな憂鬱が、ハロウィンまで続くのか。
そんなげんなりするような日々を過ごして数日。昼休み、私は久しぶりに屋上に向かった。
ここのとこ雨が降っていない。そろそろ花に水をやらなくては。
中３に上がってから気まぐれで始めた水遣りは、いつの間にか私の中で小さな楽しみになっていた。
幸いあの人はどっかに行ってていない。いいチャンスだと、私は上機嫌になりながら屋上のドアを開けた。
｢……あ。｣
｢げっ｣
屋上に出て真っ先に目に入った、ワカメ頭。……なんで今日に限ってこいつがいるのか。
｢……何やってんの、切原。｣
｢……別に。｣
｢ちょっとどいてよ。今から水やりすんだから。｣
｢……水やり？ここの花の世話、お前がしてんの？｣
｢え？うん。気まぐれだけど……｣
｢……｣
切原は驚いたように私を見ると、またすぐそっぽを向いた。
なんなんだ、こいつは。私は仕方ないと諦めをつけ、ホースの元栓を開いた。
｢切原。んなとこいたら濡れるよ。｣
｢……｣
……？
さっきはそっぽ向いたくせに、今度はじっと私を凝視してくる。
切原らしくもない、やたら真剣な目つきだった。
｢……きりは、｣
｢……本当なんでだよ……｣
｢は？｣
｢……もう思い出したくもねえのに……なんでお前……そんなに……｣
そこまで言って、切原は目元を隠し私から顔をそらした。
目元を隠すほんの一瞬、前に、あいつが泣いているのが見えた気がした。
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2015年6月13日 18時
