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車体が大きく揺れる。扉が開いて、無機質な声が駅名を繰り返し告げた。
もう、電車は動かない。こいつの話を聞いているあいだに、どうやら終点まで乗り過ごしてしまったみたいだった。
開いた扉から風が吹き込んで、私の髪を揺らす。まだ静かに泣いている、隣のあいつの髪も。
｢……｣
……たく。いつまでも泣いちゃって。
それほど辛かったなら、もっと早く打ち明けてしまえばよかったのに。
｢……、｣
私は足元に置いた鞄を掴むと、重たい腰を上げてあいつに声をかけた。
｢……降りよう。もう、あんたの話のせいで終点まで来ちゃったじゃん。戻んなきゃ。｣
｢……ごめんね。｣
｢いいよ、別に。……話聞けて、損したとは思ってないから。｣
本当は帰ってやることいろいろあったけど、まあいいや。
話聞いてよかったのは、別に嘘じゃないし。
｢ねえ。｣
｢ん？｣
ちらほら人が行き交うホームであいつは口を開いた。
｢……ありがとう。俺の話、聞いてくれて。｣
涙をこすりとった頬を緩ませ、私にしか見えない笑顔で弱々しく、女子みたいに笑った。
｢っ、｣
……何その笑顔。
どきりと胸の奥で、何かが音を立てたのがわかった。
何でそんな顔すんのよ。なんでそんな風に笑うのよ。……狡い。
｢……別に。どういたしまして。｣
私は早口でそう返して、さっさと向かい側の電車に飛び乗った。
多分、その時の私の顔は、赤かった。と、思う。
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2015年6月13日 18時
