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｢はい、氷。大丈夫？痛くない？｣
｢大丈夫だってば。心配症だな、姉貴は。｣
もらった氷のうを、右手首に当てる。当然というべきか、その後私と姉貴の間に会話が流れることはなかった。
｢……｣
それにしても、なにか引っかかるな。あの黒帽子。
なんか、どっかで見た気がするんだけど……
｢……ねえ、姉貴。｣
｢ん？｣
｢さっき、私の腕引っ掴んだあの黒帽子。……あの人、なんていうの。｣
｢ああ、真田くんね。……そんなに痛かった？｣
｢いや、そうじゃないんだけど……なんか気になったというか。｣
｢……もしかして、A彼が好きなの？｣
｢なわけないでしょあんな老け顔！｣
残念ながら私はもっと若々しい方が好みだ。
少しだけ怒った口調になった私を、姉貴は軽く笑って口を開いた。
｢冗談よ。……でも彼、あんなふうだけどすごいのよ。一年生で他の先輩こてんぱんにしてレギュラー入りしちゃったんだから。｣
一年生でレギュラー入り……それがどれだけすごいのか私にはわからないけど、まあすごいことなんだろうな。
｢……じゃあ、糸目の方は？｣
｢柳くんのこと？ふふ、彼も一年レギュラーの一人なのよ。すごいわねえ。｣
｢……へえ。他にもいんの？｣
私は後から来た奴らの顔を思い浮かべながら姉貴に尋ねた。
｢ええ。仁王くんでしょ、柳生くんに……あと丸井くんと桑原くん。みんな中学ですごく強かったんですって。｣
顔と名前は一致しないが、とりあえず奴らがそんな名前なんだってことはわかった。
すると、姉貴はでもと呟いて躊躇いがちに口を開いた。
……なんとなく、言いたいことがわかった気がした。
｢本当はね。……他にも、もう一人いたんですって。真田くんたちと同じ中学で、すごく強かった子。｣
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2015年6月13日 18時
