【小説】箱舟の軌跡 (ページ20)

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第19話カナメページ20

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時は少し遡る────

｢レイナサマ、どうしたの？｣
息絶えだえに走ってきたレイナサマ。

乱れた息を整えている彼女を心配してか、
シキも、遠くにいた使用人サマも駆け寄ってきた。

｢レイナがそんなに慌てるなんて珍しいな｣
何かあったのかい？

顔をあげたレイナに手を差し伸べる使用人サマ。
なんて云うんだっけ、こういうの。
れでぃーふぁーすと？………違うか。

｢ありがとう、ルーク｣
微笑むレイナサマ。
やっと落ち着いたのか、上下する胸に手をあてながらもしっかりこちらを見据えた。
一瞬口篭るも、意を決してその口を開いた。

｢こちらへ来る時に教えてもらったことなんだけど……この森には猛獣がいるみたいなの｣
流れる汗は疲れからか緊張からか、どちらにせよ彼女は嘘を言っているようには見えない、のだが

｢｢猛獣！？｣｣

｢猛獣……｣
明らか驚く男子2人に対して、ウチは顎に手を当てて考え込んだ。

はて、“猛獣”などいただろうか。

｢動物達の情報だからきっと本当よ｣
だから、あなた達も早く船に帰りましょう。

｢ふ～む｣

｢カナメ！レイナさんの言う通り帰ろ？｣

｢猛獣だぜ？猛獣！｣

｢ん～｣
シキに背中を押されながらも未だ思考を止めない。
レイナサマと使用人サマは辺りを見回し警戒している。

疑問。
今まで見てきたここの木々に爪の跡は無い。
何より、みんな(植物たち)から恐怖心が感じられないのだ。

確かに、何人か団員のヒト達がこの森に入ってるみたい……………あ、そういうことか。納得。

｢………もう少しだけ、ダメ？｣

｢｢｢ダメ！！！！｣｣｣

明日は誰にも気付かれずに来ようかな………

「おーい、レイナ、カナメ達どうした！」

｢｢｢ぎゃぁあぁあぁぁぁ！！！！｣｣｣

過敏に反応したみんなが一斉にしゃがみ込んだ。
ウチとばっちり。

シキ、背中押さないで痛い。

明日は絶対1人で来よう。決めた。

＊