【小説】箱舟の軌跡 (ページ17)

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第16話ラルクページ17

「さぁって､小生の我が子……メンテナンスのお時間だゾー？さてさてまずはシアン号の神経回路となる君(操縦桿)だけど」

愛用の工具と薄型パネルを持って舟に話しかける。シアン号の開発に携わったからには愛しいわが子をきちんとチェックしなければ。
操縦桿の根元にコードを差し込み薄型パネルを操作する。特に異常が無いことを確認すると､自慢の吸盤(しょくしゅ)でコードを優しく引っこ抜いた。

「じゃ､次は心臓部(制御室)行ってみようか」

1度､船内のメインシステムを停止してサブシステムに入れ替える。あ､船内アナウンスして無い…メインシステム1回落としてから切り替えだから停電するのに…まあいいや､後で謝ろう。

「うむ､何処も彼処も特に異常なし………はぁ小生は空腹ぞ………」

空腹と言っても小生はご飯は栄養にはならない。近くの森にでも魔獣探しに行こうか…魔獣は小柄な小生よりも大きいだろうし…
ズルズルと触手を引きずって船を出る。いざ森へ。と行こうとした所､買い物から戻ったのか御老体とおチビちゃんが。

「うげ……ド腐れ変態クソジイイ…」
「やあやお二人さん､今帰ったのか？小生はこれから魔獣退治と言う名の食事に行くのだが､どうだ？」

小生は二人に問いかけた。すると､おチビちゃんが顔を歪め

「行く訳ないでしょ…魔獣に殺されれば？」
「あは､そうかそうか。そうよな､確かに小生だと魔獣に一撃で殺されてしまうさ､だから君達を誘っているのだよ」

御老体は少し考えると

「そうさな…訛った体を動かすには丁度いいな…よし､儂も一緒にゆくぞ。軻遇突智を取ってくる。少し待っておれ」
「いいよ」

「待たせたな」
「いいさ…よし､護衛は任せたぞ」

森の中に入り､奥までどんどん進むと大きな熊に遭遇した。御老体が鞘に入れたままの刀を軽く振ると､熊は白目を向いて気絶した。

「さっすが國落とし…熊なんて刀を緩く振るだけか」
「はっはっは､そ言うわれると光栄だな」

熊に触手を巻き付け血を吸う。中々の味…獣臭くて野性味がある。視線を感じ､当たりを見渡すと小動物がいた。御老体と目が合った瞬間､小動物は身の危険を感じ逃げ出してしまった。小動物達がブライトエルフに話したりして勘違いされたら困るな……

「おや……」
「あれまー､御老体は猛獣､魔獣じゃ無いのにねぇ？」

御老体は小生によく血をくれる､貴重な食料なのに。まぁいい､今は腹を満たす事だけ考えよう。
御老体と森の奥まで進んだ。