今宵、鮮血ニ染メテ。【鬼滅の刃】

23 鍛錬 ページ23

A視点

「すってェ……吐いてェ…」

今、「全集中の呼吸」というものを習っている、
鬼を狩る上で1、2を争うほど、呼吸は重要らしい。

縁側に座り、心を落ち着ける。

『シシイイィィ、ふすううぅぅ。』

呼吸を習得するまでは、
師範お手製の予定表も無意味。

そんなに重要なのか？

「中々だな。
　やっぱりずば抜けた才能はあるみてェだ。」

『…………』

吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って、吐いた。

「一旦待てェ。」

しばらく隣から、
痛いほどの視線を送ってきていた師範の一声。

「お前ェ、体、熱かったりしねェか？」

『はい、します。汗が滲むほど…』

なんでもお見通し、なのか。

「全集中…取得完了だァ。
　試しにその辺走って来い。」

蝶屋敷で計測した50mのタイムは9.5だった。

『…全集中…』

タッ！

地面を踏みしめ思いっきり蹴る。

…全然違う。
まず、単純な速度。
そして、体の暑さに加え呼吸が乱れない。

これが全集中の呼吸…

「よくやったァ、走るの速えェな。
　今度、蝶屋敷に計りにいくかァ…」

本に、習得に3年かかる人もいる、
なんて書いてあったけど…なんなんだろう。

「流石上弦も認める天才剣士だ…休むかァ？」

『いえ、練習します。』

ただ単に、走るのが楽しかったから。
見栄もなにもなく、
昼食まで全集中の練習をしていた。

自分が自分じゃないみたいだった。

昼食をとり、午後の部に入る。

「まず、呼吸を習得する為に基礎を鍛える。
　取り敢えず、体力作りからだァ。
　打ち込み台が壊れるまで打ち込んどけ。」

『はい。』

私の背に合わされた台が運ばれてくる。

成る程…質感、構造、重さ。
だいたい読めた。

となると、この角度から一定の力量で打ち込めば…

師範に木刀を渡されるまでの瞬間、
計算式を立てる。

ずっと、外に放り出されて
図書館だけが居心地のいい場所だったから、
ある程度の知識はある。あれ？

『…全集中…』

右斜め上から8分目ほどの力で、
何度も何度も打つ。

縁側に座った師範からの視線を感じる。
期待、の明るい気配がビンビン伝わってきた。。

2分ほど、数十回繰り返すと台が崩れた。
ボロボロになって、地に横たわる。

何時かの誰か…誰だ、他人。
この光景を見た事がある…

「は？おいィ、マジかよ…となると…」

師範、大丈夫ですか？

頭の片隅に気遣いを置いてけぼりにし、
こっちもこっちで考えていた。

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