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Aside
ジェ「しまった、もうこんな時間か。慣れないことはするものではないな。すまないが仕事に行ってくる。お昼は冷蔵庫に入ってるからそれを食べてくれ」
壁掛け時計をチラリと見たジェイムズさんは、慌ててパンを口の中に放り込み席を立つ。
ネクタイを結び上着を羽織って、腕時計を確認するとカバンを手に家を飛び出していった。
バタンと扉が閉まる。
私はパンを咥えながらずっと閉まった扉を見続けていた。
会話はあまりないため静かであった部屋がさらに静まり返る。
カチ、カチ、と時計が動く音だけが響いていた。
なんだろう。
急に胸がきゅっと詰まる。
……変なの。
なんでパンが喉を通らなくなったんだろ。
私は牛乳で飲み込むと、味のしないレタスをかじる。
そこで不意にまた扉が開いた。
僅かに開いた扉の隙間から、ジェイムズさんの顔が見える。
ジェ「行ってきます」
それだけ言うと、再び扉が勢いよく閉まった。
私は同じようにぽかんとしまって動かない扉を見つめるしか無かった。
彼は、たった一言を言うために戻ってきたのだろうか?
"行ってきます"を言うだけのために?
律儀な人だと思った。
同時に彼の言っていた言葉を思い出す。
"慣れないことはするものではないな"
いつもは、朝食なんて作らないのかな。
私がいるから作ってくれたのかな。
だから仕事に遅刻しそうになったのかな。
迷惑をかけているという罪悪感と、
ぬくぬくとした温かさが胸に広がる。
不思議と、次に食べたトマトはほんのりと甘く感じた。
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greenthemumkiku(プロフ) - すごく...すきです、、更新、待ってます、、!!!!はよ赤井さん出てくれぁえええ、!! (2022年3月27日 23時) (レス) @page29 id: c57106f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 稲荷さん» ありがとうございます!まだまだ書き始めたばかりですが、できる限り更新できるよう頑張ります! (2022年2月17日 21時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
稲荷(プロフ) - 続き楽しみです! (2022年2月17日 21時) (レス) @page10 id: d01056f976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白ウサギ | 作成日時:2022年2月15日 20時