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Aside
一人ぼっちになってしまった私は、人気のない大学の敷地内にある自販機の前に立っていた。
ミネラルウォーターを買い、正門から出てバス停へ向かう。
蓋を開けてペットボトルに口をつければ、冷たい水が喉を潤した。
自分では気が付かなかったが相当喉が乾いていたようで、一気に半分近くを飲み干す。
胃は満たされていったが、体に穴が空き水が漏れ出している気がして腹を擦る。
もちろんそこに穴など空いてはいない。
……何も考えられない。
遠くにバス停が見えてきたところで、ふと後ろから誰かにぶつかられた。
ぐらりと体がよろめき、慌てて鞄を握りしめ姿勢を立て直す。
見上げた視界には、私にぶつかった男がうつっていた。
派手な髪色、香る危険な匂い。
大学の研究室に呼び出された男二人だ。
「……お前、大学にいたな」
ぶつかった方の男と視線があい、ぼそりと呟き声が聞こえる。
次の瞬間には手を掴まれていた。
ペットボトルが落ち、水が散る。
声をあげる間もなく口を塞がれ、引きずられ、暗く細い路地へ連れ込まれる。
いつかジェイムズさんが言っていた。
ジョディとゲームセンターに通うのは、薬に手を出すよりも健全な遊びだと。
そう、薄暗い路地には闇が漂っている。
足を取られたら沼のように抜け出せない、深く形のない闇が。
身の危険を感じ、私の口を塞いでいる毛だらけの手に歯を立てる。
しかし痛みを感じていないのか、依然と手は強く頬を押さえつけていた。
「大人しくしてろよ、お嬢ちゃん」
「おいおい、乱暴はするなよな?こいつは飛び級様なんだ。顔に傷なんかつけたら大変だろ」
「そうだよなあ、こんなチビが俺たちよりも頭も見た目もいい優等生様だもんな。このつり目は可愛げがないが」
私の目元を臭い指がなぞっていく。
悪寒がして気持ち悪さが込み上げてきた。
男たちのボロボロな歯、変色した皮膚にある注射痕、瞳孔の開いた目……。
薬をやってハイになってる。
こんな男たちを日本でごまんと相手にしてきた。
悲鳴をあげれば興奮剤になる。
涙を流せば相手を煽るだけ。
否定も拒絶も伝わらず、意思に構わず殴られ続ける。
私のよく知っている世界だ。
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greenthemumkiku(プロフ) - すごく...すきです、、更新、待ってます、、!!!!はよ赤井さん出てくれぁえええ、!! (2022年3月27日 23時) (レス) @page29 id: c57106f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 稲荷さん» ありがとうございます!まだまだ書き始めたばかりですが、できる限り更新できるよう頑張ります! (2022年2月17日 21時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
稲荷(プロフ) - 続き楽しみです! (2022年2月17日 21時) (レス) @page10 id: d01056f976 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白ウサギ | 作成日時:2022年2月15日 20時