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Aside





授業の内容は全く頭に入ってこなかった。


じわじわと窓の外から照りつける日光に肌が焼かれ、胸の内も焦げたように熱を持ち始める。


来週までに一日どれくらい勉強すれば試験範囲を完璧に覚えられるだろうか。


睡眠を削る?


食事時間もシャーペンを握る?


入浴中も教科書を広げる?


どれも非効率でよからぬトラブルを引き起こしそうだ。


どうすればいいんだろう。






カタッと隣から小さな音がした。






見ればジョディのノートが倒れている。


彼女はペンを握りながら器用にも居眠りをしていた。


ちらりと先生を盗み見ながら、彼女の体をつつく。






『ちょっとジョディ、ジョディったら』


ジョ「……ん」


『起きて。まだ授業中よ』






彼女はくわっと欠伸をし、気合いを入れ直し授業を聞き始めた。


が、数十秒後にはこくりと頭が船をこぎはじめる。


友達に構っている暇はない、か。


私はジョディから目を離し、先生の話に耳を傾けた。


軽い耳鳴りを感じながら長い時間が進んでいく。








似たような状況は幾度となく経験したことがあった。







まだ暗い部屋に閉じ込められていた頃の話だ。


ボロボロの布を身にまとい、日々課される仕事をこなす。


違法な薬の袋詰め、注射器の組み立て、金持ちの相手。


流れ作業の中でもちろんついていけない子も出てくる。


殴られて上手く手に力が入らず仕事が出来ない子。


寝不足で居眠りしてしまう子。


栄養不足で倒れてしまう子……。


仕事は常に完璧でなければならない。


そうでないと罰が下される。


他人のことを気にしている場合ではなかった。








"自分の事だけに集中しろ。周りにつられて自分まで罰を受けることになるぞ"








兄はよくそう私に言った。


自分だけに集中しろなんて言うくせに、兄はよく私を庇ってくれた。


なんで彼はこんなに私を気遣ってくれたのだろうか。







ぼんやりとした頭でチャイムの音を認識する。


授業が終わった。


先生の話も終わった。


内容は全く頭に入らなかった。







ああ、ジョディを起こさなければ。

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greenthemumkiku(プロフ) - すごく...すきです、、更新、待ってます、、!!!!はよ赤井さん出てくれぁえええ、!! (2022年3月27日 23時) (レス) @page29 id: c57106f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 稲荷さん» ありがとうございます!まだまだ書き始めたばかりですが、できる限り更新できるよう頑張ります! (2022年2月17日 21時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
稲荷(プロフ) - 続き楽しみです! (2022年2月17日 21時) (レス) @page10 id: d01056f976 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白ウサギ | 作成日時:2022年2月15日 20時

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