31 ページ31
Aside
したりと笑みを浮かべる彼は、手早くコーヒーを注文した。
そして未だに頭の回路が止まったままの私が握っているサンドウィッチが入った手提げをさりげなく受け取ると、
私の手を引いてテラス席へと誘導してくる。
椅子を引いて私を座らせ、彼自身も向かいに座り夕刊を広げる。
いつもの彼の特等席だ。
変わった事があるとすれば、正面に私が座っているだけ。
遠くから眺めていた彼の緑の瞳が、すぐ近くにある。
「それで、当たりか?」
『……な、何が?』
何とか声を絞り出せば、盛大に彼は笑った。
「日本語で返事をしたということは、お嬢さんは日本人で間違いないみたいだな」
『ええ、あなたも?』
「生まれはイギリスだ」
イギリス、確かジェイムズさんもイギリス出身だったはずだ。
それにしてもなぜ彼は私に話しかけてきたのだろう。
答えを知りたそうにしている事に気づいたのか、彼は一口コーヒーを飲むと言った。
「毎日俺の事を見てくる少女がアジア系、さらに勘を加えれば日本人じゃないかと推測していたんだ。それで今日、君のお金の支払い方法を見て確信して今、答え合わせをしたわけだ。
あの釣り銭を切りよくするために硬貨を余分に払う支払い方は日本独特のものだ。つまり君は日本で暮らしたことがあり、おそらく日本語も話せる。だからわざと日本語で話しかけた」
『なるほど……けどなぜあなたはそんな事をしているの』
「そんな事?」
『私が日本人かそうじゃないかなんて、あなたには関係ないでしょ』
今度は彼がぽかんとする番だった。
そして口元を抑え、くつくつと再び笑い出す。
「失礼、日本語で会話をするのは久しぶりでね。俺は推理をする練習をしている」
『推理の練習?』
「そうだ。例えば右斜め前に座っている男性。彼は今、不倫相手の女性と待ち合わせをしてるところだ」
『なぜわかるの?』
「まず注目すべきは彼の指。くっきりと左薬指に指輪の日焼け跡があるのに指輪自体ははめていない。格好はラフでゆったりとした服装、ネックレスもしていることから仕事ではない。
普段アクセサリーをつけている男性が指輪だけ外すのは不自然だ。つまりその指輪は見られたくないもの、言い換えればこれから合う人物には見られたくはないというわけだ。だから彼はこれから不倫相手と会うはず」
209人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
greenthemumkiku(プロフ) - すごく...すきです、、更新、待ってます、、!!!!はよ赤井さん出てくれぁえええ、!! (2022年3月27日 23時) (レス) @page29 id: c57106f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 稲荷さん» ありがとうございます!まだまだ書き始めたばかりですが、できる限り更新できるよう頑張ります! (2022年2月17日 21時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
稲荷(プロフ) - 続き楽しみです! (2022年2月17日 21時) (レス) @page10 id: d01056f976 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白ウサギ | 作成日時:2022年2月15日 20時