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Aside






ジェイムズさんはソファーの前に膝をつけると、私の目元に手を伸ばした。


一瞬、体がすくむ。


しかし彼の柔らかな微笑みを見て緊張がほぐれていった。


大きな親指が私の目の下を拭う。


そこは何故か濡れていた。






ジェ「遅くなってしまったけれど、一緒に食べないか。君の分も買ってきたんだ」


『……はい、食べます』


ジェ「これからできる限り食事は一緒に食べよう。昼は難しいかもしれないが、朝と夜は一緒に」


『はい』





ジェ「これは命令ではないからね。わかったかい」






命令、では無い。


昔同じようなことを言われたことがある。


その時はわからなかったが、今となっては少しわかる。


私が彼と独断で取引をしたように、私の自由にしていいということだ。


自由に。






……命令では、ない、のか。






自由という言葉の意味を考えながら、昨日と同じように机の上を片付ける。


食事を並べ、ジェイムズさんと対面に座って、


手を合わせていただきますと言う。


そしてフォークを握って、食べ物を口の中へ。








ジェ「どうしたんだ」


『いえ……』






一口噛む事に、涙が溢れていった。


美味しい、ご飯が美味しい。


お腹が満たされていく。


涙が止まらない。







ジェ「おいで」






ジェイムズさんはフォークを置いて、手を広げた。


"おいで"


よく私にそう言ってくれていた兄の姿が重なる。


兄はいつも抱きしめてくれた。


力いっぱい、包み込むように。






そう、こんな風に。






ジェイムズさんは私を抱きしめてくれた。


彼のスーツがみるみるうちに涙で濡れていく。


彼の温もりがあたたかかった。


あたたかくて懐かしかった。







お兄ちゃんは今、どこで何をしているだろうか。





お腹を空かせてはいないだろうか。





寒くて震えてはいないだろうか。






また私を抱きしめてくれる日は来るのだろうか。







『あいたいよ、おにいちゃん』

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greenthemumkiku(プロフ) - すごく...すきです、、更新、待ってます、、!!!!はよ赤井さん出てくれぁえええ、!! (2022年3月27日 23時) (レス) @page29 id: c57106f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 稲荷さん» ありがとうございます!まだまだ書き始めたばかりですが、できる限り更新できるよう頑張ります! (2022年2月17日 21時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
稲荷(プロフ) - 続き楽しみです! (2022年2月17日 21時) (レス) @page10 id: d01056f976 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白ウサギ | 作成日時:2022年2月15日 20時

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