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Aside






腕を噛む。


私の尖った犬歯が、私の痩せた肉の上から骨に当たる。


ひどくお腹がすいた。


空腹を感じなくなり、吐き気を通り越し、干上がった喉の張り付きにも慣れた。


そして暗闇にも慣れた。


髪や肌にこびり付いた血の匂いも、


狭いこの空間も、


独りで過ごす膨大な時間にも慣れた。


私を閉じ込めているのは恐らく金属の箱だろう。


肌に触れる冷たい面が、私の体温を奪っていく。





押しても開かず、



指をかける凹凸もなく、



殴っても壊れず、



叫んでも外に聞こえているのかもわからない。





そして時折、この箱は揺れる。


動いたと思ったらやがて止まり、しばらくしてからまた動き出す。


閉じ込められてから何時間経ったのかもわからない。


浅い睡眠も寒さと空腹に意識が覚醒してしまう。







ただ一つ、閉じ込められる前から続く変わらぬものがあった。







それは想いだ。





そして私の鋭い犬歯だ。






自分の腕に食い込む歯はやがて肌を裂き、血が滲む。


私は武器を持っている。


もしも次、この冷たい箱の蓋が開いたのなら、


外の光が見えたのなら、






蓋を開けたその人間を






噛み殺してやる。












どこか遠くから、犬が吠える声がした気がした。


とうとう私は幻覚を見だしたのだろうか。


犬の声は次第に近づいてくる。




話し声だ、人の話声だ。




男の人だ、しかも何人も。




助けを求めようか。








いや……



もし助けを求めた外にいる人たちが、私を閉じ込めたあいつらだったらどうするの?









そう、私は武器を持っている。







ガンッと金属の箱に衝撃が走った。


何度も何度も箱が揺れ、振動が脚を震わせる。






私は炎を持っている。






火の粉を散らすその炎はずっと胸の奥底で燃え続けている。


激しく心臓を鳴らす動力となって。






ガコッと蓋が外れ、外の眩い光が私の瞳を刺した。





光の中に浮かぶ人影らしきその獲物に、









食らいつく……。

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greenthemumkiku(プロフ) - すごく...すきです、、更新、待ってます、、!!!!はよ赤井さん出てくれぁえええ、!! (2022年3月27日 23時) (レス) @page29 id: c57106f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
白ウサギ(プロフ) - 稲荷さん» ありがとうございます!まだまだ書き始めたばかりですが、できる限り更新できるよう頑張ります! (2022年2月17日 21時) (レス) id: b629e84f8a (このIDを非表示/違反報告)
稲荷(プロフ) - 続き楽しみです! (2022年2月17日 21時) (レス) @page10 id: d01056f976 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白ウサギ | 作成日時:2022年2月15日 20時

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