花開く笑顔 ページ14
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「き、きみたち...よくこの距離走れたね...」
「こ、こちらこそ...」
肩で呼吸をする私と少年は、今にも棺桶に入りそうな声で会話する。
少女はその綺麗な顔を崩さず傘を差したまま。
「銀ちゃんいたアル」
そう少女が指さす先には、銀時と子供達の姿があった。
「憎い相手を想像しながら振りかぶれ」
「にくい相手...?」
「そうだ。例えば...朝日奈とか」
「先生は憎くないもん!」
「そーか?たまに憎く感じる時あるだろ」
「.....宿題が多い日とか..」
「ほら見ろ。誰しも人間だ、聖人君子なんていねーよ」
「せいじん...?」
「難しい事は後で先生に聞け。んじゃせーので行くぞ。はいせーの、朝日奈先生の鬼婆ー」
その肩に左ストレートをかませば、急速に地面へと倒れる。
「あ!先生!おかえりなさい!」
「て..てめぇ...随分と元気そうじゃねぇか...」
花開くように笑顔を向ける子供達と、肩を押さえながら膝を着く銀時。
まったく余計な事を吹き込みやがって...私の利き手が元気ならばどうなっていたことか。
「先生見て!僕の素振り!」
「俺のも見てよ先生!」
得意気な眼差しで竹刀を振る生徒達。
まだまだ形にはなっていないけれど、私が教えた頃よりも遥かに上達が早い。
教え方はかなり雑だけど、それは確実に子供達の身に染みている。
その証拠に、みんなの表情はいつもとは違うものが浮かんでいた。
「ね、心配いらなかったでしょう?」
「銀ちゃんはやる時はやる男ネ」
横に並ぶ二人は、どこか嬉しそうに笑う。
「...あの、さっきはごめんなさい。文句ばかり言ってお礼も言わず...」
「貴方達のおかげで骨折せずに済んだわ。ありがとう」
向き直った二人は、変わらず笑顔で私を見つめる。
「いいんです。元はと言えば僕ら側に非があるんですから。それに...」
「提案したのは銀さんです。お礼なら銀さんにお願いします」
彼に送るその眼差しが、きっと"信頼"と言うものなのだろう。
中庭に響く掛け声は一つにこだまし、瞳はみな同じ方向を向いた。
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もち明太子 - 面白かったです!!!!続き下さい (2022年5月7日 12時) (レス) id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
Leo(プロフ) - 今までで1番面白くて、引き込まれた作品です。何度読んでも飽きなくて、この作品を楽しみに生活していたりします。先がとても気になりますが、無理せず頑張ってください! (2022年4月20日 23時) (レス) id: e098a97811 (このIDを非表示/違反報告)
文之 - やっべスッゲー面白いです。探し求めてた君みたいな人です。更新待ってます。 (2022年3月28日 20時) (レス) id: a1eefd9b06 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - あ゛あ゛あ゛ーーっっ!!銀さんがぁ、イケメンすぎるっ(´Д⊂ヽ続きめっちゃ気になります!! (2022年3月27日 0時) (レス) @page24 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
ドラゴン(プロフ) - すごくおもしろい!更新待ってます! (2021年5月18日 10時) (レス) id: cfbce6a52c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2021年1月22日 1時