今日もモブはモブらしく、ヒロインルートを外れます

油断大敵 ページ4

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突然の松下村塾廃校からもう会うことはないと思っていた。しかし5年前、銀時が同じ町内に店を構えたと聞いた時は、もしかしたら私は彼と何らかの縁で繋がっているのかもしれないと感じて。...いや嬉しくないけど。

それでも江戸の人口は測りしえない。油断しなければ接触することは到底ありえないとその縁を甘く見ていたのだ。


今日、この時までは。







「悪ぃな、うちのじゃじゃ馬のせいで」

｢おいこら天パ。娘も付けるヨロシ｣

「うるせーんだよ加害者は黙ってろ」





尻餅をついたままの私の前には、銀時と見知らぬ美少女。さすが主人公。彼女との関係は知らないが、やはりメインキャラを引き寄せている。


相変わらず呑気な顔で手を差し出してくる銀時は、どうやら私がそれを取るのを待っているらしい。





「...いえ、大丈夫ですよ」





短くそうとだけ返し、その手を無視したまま立ち上がった。



やはり彼は私のことを忘れている。

寺子屋時代の、ほんの一瞬同じ学び舎に通っていただけの仲。それに途中から私は彼らを避け出すようになり、後半は背景の一部に同化するほどモブに徹していた。だから益々私の記憶は薄いはず。

しめた。ぶつかっただけの通行人Aのまま、この出会い頭にこんにちはイベントを乗り過ごそう。



手首は相変わらず痛むけど、はやくこの場から立ち去る為には平然を装わなければ。




にっこりと微笑み余裕ぶって。
集まる視線を気にしないよう、散らかる持ち物を拾い集める。



油断大敵。今回はそれを学んだいい機会としよう。

...そう、油断大敵。







「何か落とした...」







途中言いかけて止まる銀時の声。

不思議に思い其方を向けば、その手の中にあるのは私の大事な大事な...







松下村塾の教科書







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