〔 番外編 〕雑渡昆奈門の恋 ページ36
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「 そこにいるのは何者だ 」
「 雑渡さん、こんばんは 」
眩しい夕日が辺りを照らし、蜩が夏の終わりを啼いていた。
城の裏山にあたるこの場所は格別に見晴らしが良い。
大木に寄りかかるその人の横に並べば、私を見るなり驚いたように瞳を開かせる。
「 姫、また抜け出してきたのですか 」
「 誰かさんと違って尊奈門さんは優しいですからね 」
貴方が"姫"なんて呼ぶから。
寂しいなんて気持ちを押し込めるように皮肉めいた笑顔。
明日はタソガレドキ城城主黄昏甚兵衛と祝言を挙げる日。
それに合わせ城下町では祝いの祭りが開かれていた。
「 戻りましょう。明日は大切な一日です 」
「 風邪を引かれては___ 」
「 どうして此方を見てくださらないのですか 」
私に背を向け、城へと戻ろうとする雑渡さん。
その人の袖口を引っ張れば、口を閉ざしてしまう。
「 知っているんでしょう 」
「 ...まだ私の心に貴方が居ることくらい 」
初めて出会ったのは、私が九つの頃。
噂に流れる、誰もが恐れる忍者隊組頭は、
賊から命を救ってくれた優しい青年だった。
情深く面倒みの良い恩人が、想い人へと変わるのにそう時間はかからなかった。
そして、去年の晩夏。
城下祭りで黄昏甚兵衛様に見初められた私は、否応無しに正妻候補へと進んだ。
城下から聞こえるお囃子に、太鼓の音。
子供達の無邪気な笑い声までもが私の心に刃を突き付けるようだった。
静かに握ったその大きな手は、受け取るわけでも振り離すわけでもなく、
ただ力なく、なされるがままで。
「 貴女は勘違いしているだけだ。こんな所を見られては私の立場が無くなります。お手を離しては頂けませんか 」
「 雑渡さんは本当に酷い人です..嫌なら嫌と残酷に振ってくだされば、私も一つ踏ん切りが付くものを.. 」
静かに握ったその大きな手は、受け取るわけでも振り離すわけでもなく、
ただ力なく、なされるがままで。
「 ...初めは雛をあやす親鳥の気持でいたのですがね 」
「 いつの日からかどうしてか、その娘だけを想うようになってしまった.. 」
音もなく夕日は山隠れ、城下の町は点々と灯りが燈る。
「 今はすっかり誰ソ彼時。誰も私達だと分かる者はいません 」
「 ...そう。私も貴方が誰だかわからない 」
頬を撫でる風のように、その手にゆっくりと力が込められて。
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光華(プロフ) - □白澤□さん» 本当ですか？！めっちゃ嬉しいです！ (2021年7月28日 23時) (
レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
□白澤□(プロフ) - 光華さん» 初恋の桜色については私も1番お気に入りの作品なので必ず完結するまで更新する予定です。余談ですが、ダラダラ更新であるにも関わらず光華様が何度もコメント下さっていることとても嬉しく頂戴しております！これからも応援の程宜しくお願い致します。 (2021年7月28日 22時) (レス) id: 6b75cad2ff (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - すみません､初恋は桜色ってもう更新されませんか？ 催促では無く個人の質問です 気を悪くされたらすみません､私の大好きな作品なので…（勿論この作品も好きです！）応援してます! (2021年7月26日 23時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
ユリリン(プロフ) - 更新されたんですね。楽しみにしていました。今回の話面白いです。続き待っています。 (2020年7月8日 12時) (レス) id: 4f0d699f1e (このIDを非表示/違反報告)
煌 - 赤髪の白雪姫ですか？良いですね！ (2020年4月23日 13時) (レス) id: 7c11cff2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：□白澤□ | 作成日時：2020年3月9日 15時
