. ページ29
.
「 妙だな 」
晴れた校庭の下。
文次郎の呟きに、他の六年生も頷く。
久しぶりの学園内での授業だというのに、途中自習を言い渡し学園長庵へと向かってしまった先生。
どうやら私達の実技担当教師だけではないようだ。異変を感じた他の学年もぞろぞろと校庭へ出たり、教室から外を覗く様子が伺える。
「 面白そうだな！探るか？ 」
「 いや、下手に動かない方がいい 」
「 あぁ。今回はただの学園長先生の思いつきではなさそうだからな 」
苦無を取り出す小平太を静かに制する長次に、続く留三郎。
睨むような目で学園長庵を観察していると、隣にいた伊作が口を開いた。
「 仙蔵、傷の具合はどうだい？随分とAが心配していたようだけど 」
皆が不思議な会議へと気を取られる中、流石保健委員会委員長と言ったところか。
その言葉に、不格好ながらも大川が補修した上着の腕部分を見れば自然と頬が緩む。
「 あの女は少しお喋りが過ぎるな 」
あの雷雨の日、気配は察していたがまさかあいつが飛び込んで来るとは思わなかった。
強がりなあいつの初めて見せた弱い部分。
" いかないで "
「 せんぱーい！ 」
突然と響く乱太郎の声に、我に返らされる。
気づけば私達の元へと駆け寄ってくる乱太郎に一年は組の忍たま達。
酷く焦っているような様子に再び意識がそちらへと集中する。
「 きりちゃん！ 」
「 聞いてしまったんです、この聞き耳頭巾が 」
前に出されたきり丸は、どこか誇らしげにその耳を見せてくる。
「 事務員のAさんが、タソガレドキ城城主黄昏甚兵衛に嫁がれるという話を! 」
.
.
.
学園長庵を出た頃は、もうすっかりと日は落ちていて。
夕飯の時間だけれど、長屋の縁側に座り夕暮れ色の空を見つめていた。
先日行われた運動会で来賓として招待されたタソガレドキ城主は、そこで私を気に入ったとか。
今回の文の内容は嫁入りを前提とした見合いの申し込みだった。
噂に聞くタソガレドキ城も黄昏甚兵衛も良いものではないけれど、惑わせるものがあった。
"私が忍術学園とタソガレドキを結ぶことができれば、学園にとって良い方向に向くのではないか"
「 ...なんて私にそんな力あるわけないか 」
「 あるよ 」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
光華(プロフ) - □白澤□さん» 本当ですか？！めっちゃ嬉しいです！ (2021年7月28日 23時) (
レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
□白澤□(プロフ) - 光華さん» 初恋の桜色については私も1番お気に入りの作品なので必ず完結するまで更新する予定です。余談ですが、ダラダラ更新であるにも関わらず光華様が何度もコメント下さっていることとても嬉しく頂戴しております！これからも応援の程宜しくお願い致します。 (2021年7月28日 22時) (レス) id: 6b75cad2ff (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - すみません､初恋は桜色ってもう更新されませんか？ 催促では無く個人の質問です 気を悪くされたらすみません､私の大好きな作品なので…（勿論この作品も好きです！）応援してます! (2021年7月26日 23時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
ユリリン(プロフ) - 更新されたんですね。楽しみにしていました。今回の話面白いです。続き待っています。 (2020年7月8日 12時) (レス) id: 4f0d699f1e (このIDを非表示/違反報告)
煌 - 赤髪の白雪姫ですか？良いですね！ (2020年4月23日 13時) (レス) id: 7c11cff2de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：□白澤□ | 作成日時：2020年3月9日 15時
