二十八話 眼鏡 ページ28
「そ、そういえば、外はもう晴れているみたいですよ！」
話題をそらすため、あからさまにそう言った。昨日あれだけ降っていた雨は止み、窓の外は清々しいほど晴れている。
「ようやく伯爵家に帰れますね！」
「……そうで……あ」
不自然に言葉を区切ったグレンさんを見ると、彼の手には……あれは、眼鏡？
「もしかして、それ、グレンさんの眼鏡ですか？」
「……はい。ベッドから落ちた時、いっしょに落ちて下敷きにしてしまったみたいです」
「べ、弁償します！」
「いいですよ。自分の不注意でしたから」
もうすでに淡々と、いつもの様子のグレンさんはそう答えた。それでも大丈夫だろうか。普段から眼鏡をかけている人が眼鏡無しだなんて……
「では、着替えて帰りましょうか。自分は大浴場の更衣室で着替えてきます」
そう言って、颯爽と階下の大浴場へ向かってしまった。意外と普通そうにしていたし、元の視力はそれほど悪くないのだろう……そう思っていた。
グレンさんが部屋を出てから少しして、ドンガラガッシャーンという音がまさに似合うような、大きな音が聞こえてきた。慌てて部屋を出て見に行けば、階段の方からである。悪い予感がして見ると、そこには倒れたグレンさんがいた。
「グレンさん！大丈夫ですか？！」
「大丈夫ですか、お客様！」
定員さんも慌ててやってきて助け起こす。事情を聞けば、足を踏み外したらしかった。いつものグレンさんなら考えられない出来事だ。絶対に眼鏡がないせいである。それについて聞けば、
「人や壁の存在は近づけばぼんやり見えるんですが、足元となると見えにくいですね」
と答えていた。十分視力は悪いじゃないか。
私は思いきって彼の手をとる。少し驚いたように彼はこちらを見てきた。
「……だ、大浴場まで、案内します。行く途中、人とぶつかったり転んだりしたら危険でしょう？」
そうして私たちは手を繋いで大浴場へ向かった。恥ずかしくてグレンさんの様子は見ることも出来ず、ずんずん進んでいく。向かう途中の周りからの視線が痛い。
(仕方ない、これは仕方ないこと。それに、いつも助けてもらっているお礼でもあるの、これは)
私は、自分にそう言い聞かせ続けていた。
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» コメントありがとうございます。お褒めの言葉、大変嬉しいです！嬉しすぎて小躍りしてしまいました……本当にありがとうございます！これからも更新頑張ります！ (2019年11月25日 23時) (
レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 初コメ失礼します、続編おめでとうございます！臨場感あふれる文章から伝わる伯爵家のキャラの濃さや、執事・使用人陣のよさ、なんといってもソフィアちゃんとアリスちゃんの可愛らしさにいつも癒されています(*^^*)これからも更新、陰ながら応援させていただきますね！ (2019年11月25日 22時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お芋 | 作成日時：2019年11月25日 20時
